【コラム】(プロファイバンカーの視座)第89回 キャッシュフロー・コントロール手法(40) まとめ1

2021.12.09 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


プロジェクトファイナンスにおけるキャッシュフロー・コントロール手法について、昨年の4月以来1年半以上に亘り連載させて頂いた。本コラム連載の第50回目からキャッシュフロー・コントロール手法を採り上げてきた。キャッシュフロー・コントロール手法について、これまでの連載の内容を振り返りながら要点をまとめてゆきたいと思う。

まず、プロジェクトファイナンスにおけるキャッシュフロー・コントロール手法とは何のことなのか。プロジェクトファイナンスにおけるキャッシュフロー・コントロール手法とは、プロジェクトファイナンスで借入をしている事業会社(借主)のキャッシュフローをコントロールする手法や工夫を総称したものである。具体的には事業会社に入ってくるキャッシュフローを漏れなくすべて把握し(入りを量る)、それから事業会社から出てゆくキャッシュフローを制御すること(出ずるを制す)である。「入りを量りて出ずるを制す」という古い言葉がある。キャッシュフロー・コントロール手法は、まさに「入りを量りて出ずるを制す」ための手法・工夫の総称である。

そして、プロジェクトファイナンスにおいてキャッシュフロー・コントロール手法はどうして重要なのか。それはプロジェクトファイナンスではレンダーはノンリコースで事業会社(借主)に融資を行っているからである。レンダーはノンリコースで事業会社に融資を行っているため、融資の返済原資を事業会社(借主)が創出するキャッシュフローのみに頼らなければならない。事業会社(借主)が創出するキャッシュフローが唯一の融資の返済原資なのである。従って、事業会社の収入はすべて把握できているのか(入りを量る)、事業会社の支出は適切に行われているのか、支出の優先順位は適切か(出ずるを制す)ということに意を用いていることが融資の返済を確実にするために必要になる。そういう意味でプロジェクトファイナンスにおけるキャッシュフロー・コントロール手法は専らレンダーのためにある。キャッシュフロー・コントロール手法の副次的な効果(あるいは反射的な利益)としては、お金は出すがあまり口は出さないマイナー出資者にとっても有益な点を挙げることができる。

プロジェクトファイナンスにおけるキャッシュフロー・コントロール手法にはどんなものがあるのか。今回はキャッシュフロー・コントロール手法を大きく基本モデルと応用モデルの2つに分けて説明してきた。

基本モデルはプロジェクトファイナンスの案件なら必ず利用されているキャッシュフロー・コントロール手法の一群である。具体的には次のようなキャッシュフロー・コントロール手法の一群のことである。

【キャッシュフロー・コントロール手法の基本モデル】

プロジェクトファイナンス案件の中には、応用モデルは一切採用せず基本モデルしか組み込まれていないプロジェクトファイナンス案件がある。例えば、有力な電力購入者との間に長期の電力販売契約を有する火力発電案件はその好例である。また、上記の基本モデルのキャッシュフロー・コントロール手法の一群はプロジェクトファイナンスの世界でしか利用されていないというものではない。これらはレンダーが借主のキャッシュフローを管理するうえで優れた手法なので、通常の企業向け融資(コーポレートファイナンス)にも利用されることがある。特に借主の業績が必ずしも芳しくないときに、レンダーの保全を補完するために、これらのキャッシュフロー・コントロール手法が利用されることがある。

キャッシュフロー・コントロール手法の応用モデルにはさまざまなものがある。案件毎に工夫を凝らすこともあるので、そのすべてを捉えることは難しい。今回はこれまで比較的頻繁に用いられている代表的なものを採り上げておいた。今回採り上げたキャッシュフロー・コントロール手法の応用モデルは次の4つである。

【キャッシュフロー・コントロール手法の応用モデル】

(次回に続く)

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Photo by Rodrigo Kugnharski on Unsplash

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