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【コラム】(インフラプロジェクト事業開発・運営の現場から)第16回 TICAD7に寄せて(アフリカにおけるインフラプロジェクト)

2019.08.29 連載コラム

ナレッジパートナー:桶本 賢一


 前回第15回のコラムでは、IFRS(国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)による包括利益計算書の概要を解説した。その上で、金利変動リスクヘッジのために締結した金利スワップの公正価値の純変動(ヘッジが有効である場合)が、「その他包括利益(損失)」に計上される例をとりあげた。

 続くトピックとしては、「ヘッジ会計の概要」や、「金利スワップ等の公正価値の変動が、当期純利益に影響を及ぼす事例(=つまり「非有効」と判定されたヘッジの取り扱い)」について考察するのが自然な流れである。が、今回はいわゆる「時事ネタ」として、今週(2019年8月28日~30日)開催予定のTICAD 7と、アフリカにおけるインフラプロジェクトについて取り上げることとしたい。

 というのは、筆者は2014年以降、アフリカにおけるIPP(Independent Power Producer、独立発電事業者)案件に関わっており、2016年のTICAD 6以降、TICADには強い関心を持っているからである。TICADとはTokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略で,アフリカの開発をテーマとする国際会議のことを指す。筆者の知る限りでは、「ティカッド」と発音するのが一般的である。

 1993年以降、日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)と共同で開催しており、今回が7回目になる。TICAD 7開催に先行する形で、経済産業省や日本貿易保険(NEXI)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)等による新しい取り組みが最近の新聞等でも報道されているので、インフラトの読者の方の中でも、注目しておられる方もいるだろう。

 とはいえ、何らかの形でアフリカに縁がある方を除けば、「TICAD 7って何それ? サザン(オールスターズ)のEROTICA 7なら知ってるけど?」という往年のサザンオールスターズファンの方もおられるであろうから(筆者の知人には実在する!)、まずはTICADの歴史から振り返ってみよう。

 開催年と開催地、開催時点での日本の総理大臣名と外務大臣名を一覧にすると、以下の表のようになる。(参考資料:外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/index.html)に記載の情報をベースに筆者作成)

 1993年に初のTICADを開催した際に、当時の関係者がTICADという枠組みがここまでシリーズ化されることを想定していたか、筆者は知る由もないが、世界情勢の推移とともに、テーマも変化している。

 以前は無償資金援助やODAのように、政府セクターによるアフリカへの「支援」策が中心だったが、近年はアフリカを本邦企業にとっての「市場」としてとらえ、本邦企業によるアフリカ進出を日本政府および政府セクターとして支援する、という動きが強まっている。これはアフリカへの積極的な進出で知られる中国への対抗策という側面もあると言えるだろう。

 例えば2013年のTICAD 5で、「アフリカ首脳と日本の民間企業の代表が直接対話を行う『民間との対話』セッションが(中略)初めて実施」された。(出典:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page5_000187.html)。続く2016年のTICAD 6では、「官民総額300億ドル規模の質の高いインフラ整備」「道路・港湾整備や再生可能エネルギー(地熱発電等)を含む質の高いインフラ投資」が打ち出された(出典:https://www.mofa.go.jp/mofaj/af/af1/page3_001785.html)。こうした背景・文脈を踏まえると、今回のTICAD 7を前にした各種報道(例:JBICによるアフリカでの再生可能エネルギーの普及支援や、ジェトロ(日本貿易振興機構)による、本邦スタートアップ企業がアフリカに進出するのを支援等)も、より理解が深まるであろう。

 なおTICADの性質の変遷については、下記のジェトロのサイトに記載のレポートに詳しいので、興味のある方は適宜参照されたい。https://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Periodicals/Africa/2017_13.html (ジェトロ「アフリカレポート」2017年 No.55 論考;TICADの変遷と世界——アフリカ開発における日本の役割を再考する——)

 ちなみに一言でアフリカといっても、地中海沿岸の北アフリカと、いわゆるサブサハラ(サハラ砂漠以南)、南アフリカ周辺では様相が大きく異なる。同じサブサハラでも、西アフリカと東アフリカで異なるし、同じ西アフリカでも、旧宗主国(フランスが多く、次いで英国)によって公用語や法制も異なる。このため実際に本邦企業がアフリカにおけるインフラプロジェクトを手掛けるにあたっては、国ごとに異なるカントリーリスクの分析が必要になるのは言うまでもない。

 以上、今回はTICAD 7開催にあわせて、TICADの概要や歴史、アフリカ市場の多様性について記載した。次回は「ヘッジ会計の概要」等、会計関連の話題に戻る予定である。

注)本稿の内容や意見は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
  コラムで取り上げて欲しいテーマがあれば、プロフィールに記載の連絡先まで個別にご連絡下さい

桶本賢一

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)

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