【コラム】第1回 保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について

2021.09.21 連載コラム

ナレッジパートナー:須知 義弘


インフラトにおいては、2019年9月から2020年6月にかけて、20回にわたり、民間の貿易保険(取引信用保険、ポリティカルリスク保険、ストラクチャードクレジット保険)の活用というテーマで寄稿させていただいた。今回は、同じ信用リスクを扱う商品でも、貿易保険とはストラクチャーやカバーの趣旨が違うシュアティボンド(保証証券)について、説明していきたいと思う。尚、今回の連載では日本の公共工事を行うにあたって加入が義務づけられている履行保証保険や履行ボンドは原則取り上げない。

日本企業が海外プロジェクトを受注し、海外で工事を請け負うことが当たり前になっている昨今、シュアティボンドの重要性は今後も衰えることはないであろう。シュアティボンドは、大きく分類すると、商取引に関わるボンド(Commercial Bond)と契約に関わるボンド(Contract Bond)があり、それぞれの国の歴史、商習慣、法律/規制やマーケットの特性により、内容がかなり異なってくる。こうした傾向は、特にCommercial Bondでは顕著である。Commercial BondとContract Bondのついては次回以降、具体例を挙げながら詳しく説明することにする。

さて、ではシュアティボンドとは果たして何であろうか。また、同じ信用リスクを扱う信用保険と何が違うのだろうか。信用保険とシュアティボンドの最大の違いは、前者が保険契約者(債権者)と保険会社の2者間の契約であるのに対して、後者は、保険契約者(債務者)、債権者、保険会社の三者間の契約であるということである。詳細は下図を参照いただきたい。

信用保険においては、売買契約、請負契約、融資契約などの主契約の債権者が、それらの債権が回収できないリスクを保険会社に転嫁することになるため、2者間契約である。そもそも債務者は信用保険契約の存在自体を知らないことが多い。一方、シュアティボンドでは、主契約の債務者が保険契約者となり、自らの債務不履行を保険会社に保証してもらうために保証委託契約(Indemnity Agreement)を締結する。また、主契約の債権者は、保険会社からシュアティボンドを発行してもらうことにより、債務者の債務不履行リスクをカバーする。従い、3者間の契約となる。

シュアティボンドを理解するには、建設工事を考えるとわかりやすい。債権者かつ発注者は、債務者である請負業者(建設会社)に工事を発注するのだが、請負業者は自らが行う工事の保証(請負契約通りに工事を遂行できるか)を保険会社に依頼し、Indemnity Agreement を締結する。保険会社はシュアティボンド(このケースではパフォーマンスボンドを指し、内容については次回以降で説明)を発注者に発行することにより、請負業者のパフォーマンスを保証する。もし、請負業者が工事を遂行できない場合、1)保険会社はあらかじめ決められた金額を発注者に払うか、2)別の請負業者に工事を完成させることになるが、国によっては1)のみの場合もある。また1)の場合でも2)の場合でも、保険会社は支払った金額やかかった費用を請負業者に求償する。ただし請負業者が倒産した場合は、求償してもほとんど回収できないのが実情だ。尚、シュアティボンドで使う用語だが、通常、海外では債務者をPrincipal/Applicant/Obligor、債権者をObligee/Beneficiary/Owner、保険会社のことをSuretyというが、ここでは主として債務者をPrincipal、債権者をObligeeと呼ぶことにする。

次回以降、シュアティボンドについて詳しく解説する。

須知義弘

*アイキャッチ Photo by C Dustin on Unsplash 

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