【コラム】第3回 保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について

2021.10.19 連載コラム

ナレッジパートナー:須知 義弘


さて、シュアティボンドと銀行保証の違いであるが、前回に説明したシュアティボンドが、「条件付き」の場合は明確である。「条件つき」シュアティボンドの場合は、たとえば、Principal(債務者/請負者)が、工事を遂行できないという理由で、Obligee(債権者/発注者)がSurety(保険会社)に保証請求してきた場合、SuretyはPrincipal、Obligee双方の言い分を聞き、その保証請求が妥当かつ有効かどうか判断する。一方、「無条件」シュアティボンドの場合は、ほぼ銀行保証と同じである。「ほぼ」と言ったのは、「無条件」シュアティボンドの中にも、銀行保証と同様に、Principalが仕事(たとえば工事)を実行できていないことすら、Obligeeが証明する必要のないもの、あるいは、少なくともその証明が必要となるものまで、いくつかの種類があるからである。

では、Obligeeが、Principalが仕事を実行できていないことを証明する必要がない「無条件」シュアティボンドと銀行保証(スタンバイ信用状という形をとることもある)の違いは何であろうか。契約内容/文言上の違いはないが、実務的には以下の違いが考えられる。

コスト削減につながる可能性がある。

  • 銀行保証(特にスタンバイ信用状)は、レート(保証自体のコスト)に加えて、手数料がかかる場合があるが、シュアティボンドではそういった手数料は発生しない。
  • 銀行保証のレートは金利の影響を受ける。金利の上昇局面では、銀行保証のレートも上昇する傾向にあるが、シュアティボンドは、金利の影響をほぼ受けずに値付けをするので、銀行保証のレートより安くなる場合がある(逆に金利下降局面では、シュアティボンドの方が高くなる可能性もあるが、現状の金融情勢を考えるとこれ以上金利が下がることはないと考えられる)。
  • 少なくともここ数年は、Surety(保険会社)のシュアティボンドに対する引受アペタイトは旺盛で、Surety間の競争も激化していることから、割安なレートが出る傾向にある。

銀行の与信枠を拡大できる可能性がある。

  • 銀行保証は、与信枠を使用したとみなされ、借入余力を削減してしまう場合があるのに対して、シュアティボンドは与信枠を使わないので、その分借入枠として使用することができる。特に資金需要が逼迫している状況、または、銀行の与信枠が十分でない企業では、銀行保証のシュアティボンドへの入れ替えは効果があるだろう。

次回以降で、具体的なボンドの種類を説明していく。

須知義弘

*アイキャッチ Photo by Chris Leipelt on Unsplash

【バックナンバー】
【コラム】第2回 保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について
【コラム】第1回 保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について

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