【コラム】（プロファイバンカーの視座）第152回プロジェクトファイナンス超入門（16）

2024.07.25 連載コラム

ナレッジパートナー：井上義明

【プロジェクトファイナンス市場－地域別】

前回から世界のプロジェクトファイナンス市場を見ています。
今回は、2023年のプロジェクトファイナンス市場の地域別の内訳を見てゆこうと思います。ここでは世界のプロジェクトファイナンス市場を3つに分けて見てゆきます。1つ目が米州（Americas）です。米州とは北米、中米、南米のすべてを含みます。2つ目が欧州・中東・アフリカです。英語ではEurope、Middle East、 Africaと表記しますから、それぞれの頭文字を取ってEMEAと呼ぶことが多いです。3つ目がアジア太平洋・日本です。プロジェクトファイナンスのグローバル市場をこのように3つに分ける慣行は、随分前から行われています。そして、プロジェクトファイナンス業務をグローバルに展開している金融機関は、この3分割法に合わせて組織作りを行っているのが普通です。つまり、米州マーケットは通常ニューヨークからカバーし、欧州・中東・アフリカ（EMEA）マーケットはロンドンからカバーし、アジア太平洋・日本マーケットはシンガポール・香港・東京等からカバーする、といった具合です。

【2023年プロジェクトファイナンス市場の地域別内訳（金額ベース）】（注1）

上記の円グラフは2023年のプロジェクトファイナンス市場を、その3つの地域別に分けて見たものです。金額ベースで分けています。前回掲載した棒グラフの2023年の部分と同じ内容です。
米州（Americas）は1,510億米ドルで最も大きく、全市場の約43%を占めています。それに次ぐのは欧州・中東・アフリカ（EMEA）で1,290億米ドル、全市場の約36%です。アジア太平洋・日本は3地域の中で最も小さく、750億米ドルで、全市場の約21%です。

【2023年プロジェクトファイナンス市場の地域別内訳（件数ベース）】（注2）

上記の円グラフも2023年のプロジェクトファイナンス市場を3つの地域別に分けたものですが、これは件数ベースです。全案件989件を3つの地域に分けて見ています。件数ベースで見ると、金額ベースとは少し趣が異なります。
米州（Americas）は455件で最も多く、全市場の約46%を占めています。それに次ぐのは欧州・中東・アフリカ（EMEA）で279件、全市場の約28%です。アジア太平洋・日本は3地域の中で最も少なく、255件で、全市場の約26%です。

【2023年プロジェクトファイナンス市場の地域別内訳（1案件当たりの融資金額）】（注3）

上記の棒グラフは、前出2つの円グラフのデータから、地域別に1案件当たりの融資金額を算出したものです。金額の単位は百万米ドル（US$ Million）です。ご注意ください。具体的には最初の「金額ベース」の円グラフの数値を、次の「件数ベース」の円グラフの数値でそれぞれ割り算をして、算出しています。

なお、前回指摘の通り、市場全体で見たときの1案件当たりの平均融資金額は約3.59億米ドル（約538億円）です。この1案件当たりの平均融資金額に対して、米州とアジア太平洋・日本の市場は下回っていますが、欧州・中東・アフリカの市場は上回っています。

2つの円グラフと上記の棒グラフから、次のような点を指摘することができると思います。

世界のプロジェクトファイナンス市場の中で米州市場が一番大きく、案件数も一番多い。
それに次ぐのが欧州・中東・アフリカ市場で、欧州・中東・アフリカ市場は1案件当たりの融資金額（１案件当たりの事業規模、とも言える）が最も大きい。
アジア太平洋・日本の市場は一番小さく、その割に案件数が多いため、1案件当たりの融資金額（１案件当たりの事業規模、とも言える）が最も小さい。

（注1）（注2）
LSEG Data & Analytics社のGlobal Project Finance Review Full Year 2023から筆者が円グラフを作成
（注3）
LSEG Data & Analytics社のGlobal Project Finance Review Full Year 2023から筆者が棒グラフを作成

プロジェクトファイナンス研究所
代表　井上義明

*アイキャッチ　UnsplashのJude Arubiが撮影した写真

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