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【コラム】第14回 民間の貿易保険(取引信用保険、ポリティカルリスク保険、ストラクチャードクレジット保険)の活用について(14)

2020.03.24 連載コラム

ナレッジパートナー:須知 義弘


今回は、今までと少し趣向を変えて、筆者が今まで携わってきた案件の中から、民間の貿易保険ならではの特徴的な案件をいくつか紹介したいと思う。秘匿性のある情報を含む為、契約者の業種、相手国の地域などは一部変更を加えているが取引の概略は掴んでいただけるだろう。

まずは、民間の保険会社に貿易保険が開放されてから1~2年後に成約した大型案件である。これは日本のゼネコン数社で組成したジョイントベンチャーが中東のA国から受注した公共工事の不払いリスクをカバーする保険である。以下に示すように案件自体は単純なものであるが、当初の工事期間が3年半、契約金額が5,000億円超、保険金額も800億円になる大型プロジェクトであった。

保険金額の800億円とは、発注者が不払いを起こした時に、ジョイントベンチャーが被る最大予想損害金額である。相手先国A国の信用力も悪くないので、本件に関心のある保険会社は数社あったが、いかんせん保険金額が大きいので、800億円の金額が集まるかがキーであった。結果的には、日本国内で認可を持つ保険会社4社(この内1社は独自に別途再保険を手当てした)、国外の保険会社5社の計9社で引き受けた案件である。筆者が知る限り、日本国内で民間の保険会社だけで引き受けた最大級の案件ではないかと思う。尚、本件、日本貿易保険(NEXI)でもカバーの提供はできたが、保険料が民間よりかなり高額であったことが、ジョイントベンチャーが民間の保険を選んだ理由である。

次は、日本の商社が東南アジアの鉱山プロジェクトに投資した際の海外投資保険の案件である。

実際の投資ストラクチャーはもう少し複雑だが、単純化すると上図のようになる。日本在の商社がまず自社の海外子会社と、投資パートナーであるB社とジョイントベンチャーC社を設立し、次にそのC社が別の投資パートナーであるD社とジョイントベンチャーE社を設立し、最終的にはこのE社が投資パートナーF社と設立したG社が鉱山を所有することになる。日本の商社からすると、この鉱山に対して 28.125%の権益を持つことになり、この権益に対して海外投資保険、特に接収・収用・国有化リスクと戦闘・政治的暴力リスクのカバーが欲しいというニーズであった。金額としては60億円前後だったので、保険会社2社を使ってカバーの提供をすることが出来たが、ここに民間の貿易保険の柔軟性を指摘することができる。NEXIにおいては、接収・収用・国有化リスク、戦闘・政治的暴力リスクとも保険事故発生前と発生後の決算書(直接投資をしている「海外子会社」の決算書)を比較して、損害額の算定を行うのだが、この複雑なストラクチャーでその損害をきちんと決算書に反映させるのはかなり難しいと言えるだろう。民間の場合であれば、60億円を限度として、ジョイントベンチャーG社が被った損害の28.5%を単純にカバーすることが可能である。

最後は前回紹介した案件にもう少し説明を加えたいと思う。

日本在のリース会社は、ロシアの建設会社に約50億円相当の建機をリースしようとしていた。この建設会社はその建機を使い、国営ガス会社が使用するパイプラインの建設を行うとのことだった。リース料の原資は国営ガス会社からの建設代金として入ってくるものの、特にお金が色分けされているわけではなく、当初探していたこの建設会社の信用リスクを引き受けてくれる保険会社はいなかった。そこで発想の転換から、とにかくリース資産を守れば信用リスクをカバーするのと同等の効果が得られるのではないかということで、海外資産包括保険に加入したのである。この保険に加入することで、リース期間が終わり、別の国で再リースしようとした時に、輸出ライセンスが取得できず持ち出せないというリスクもカバーすることができる(本件はファイナンスリースだったので、その必要はなかったが)。

次回はNEXIと民間マーケットの違いについて論じてみたい。

須知義弘

*アイキャッチ Photo by Campbell Boulanger on Unsplash

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