【コラム】(プロファイバンカーの視座)第46回 PF組成しやすい事業(32)まとめ

2020.02.27 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


これまで「PF組成しやすい事業」というテーマで随分いろいろな説明をしてきた。これまでの説明をまとめておきたいと思う。

まず、プロジェクトファイナンスの案件には組成しやすい事業のタイプが存在するという事実である。これは昔から分かっていたわけではないと思うが、長いビジネスの実践の中で自ずと集積された経験や知恵の結果だと思う。組成しやすい事業とは、具体的には「資源型」事業と「電力型」事業の2種類である。「資源型」事業というのは、資源開発事業のことで、具体的には石油・ガス、鉄鉱石、銅、ニッケル等の地中にある資源を採掘・生産する事業のことである。「電力型」事業というのは、発電(IPP)事業に代表されるので、このように命名しているが、長期オフテイク契約があってかつ安定的な事業収入が見込まれる仕組みのある事業である。長期オフテイク契約があるだけでは十分ではないのでご注意頂きたい。安定的な事業収入が見込まれる仕組みというのは、事業会社が提供する財やサービス(例えば電力)の単価(例えばUS xxx cents/kwh)が長期オフテイク契約で決められているということである。「電力型」事業の具体例は、発電(IPP)事業、水事業(淡水化事業)、再生可能エネルギーの他、Availability Paymentの仕組みのあるPPP事業、さらに石油・ガス分野のLNG船(液化天然ガスを運搬する専用船)、FPSO(Floating Production and Storage Offloading system、浮体式石油生産・貯蔵・搬出設備)、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit、浮体式LNG受入・再ガス化設備)、パイプライン、北米LNG事業などである。以上のことを一表にまとめたものが次の図表である。

さて、「資源型」事業と「電力型」事業とがプロジェクトファイナンスを組成しやすい事業であるとは言ったものの、両事業の性格はかなり異なる。「資源型」事業は資源開発事業なので、埋蔵量の問題が伴う。埋蔵量の問題は、量的に十分かどうかという問題にとどまらない。当該資源の質的な問題も見極めなければならない。そして、最も重要なのは採掘コストである。良質で十分な資源が地中に存在することは分かっていても、諸事情で採掘コストが高く、とても事業化できない、という事例は時折あることである。かつての米国のシェールオイル・シェールガスはこの一例であろう。随分前からシェール(頁岩)の中に石油やガスが含有されていることは分かっていた。しかし、採算を確保できるような採掘コストで取り出す方法がなかなか見出せなかった。今世紀に入ってから、水圧破砕等の技術が確立し、今日のような増産を実現するに至った。

さらに、資源開発事業では生産・販売する生産物(石油・ガス、鉄鉱石、銅、ニッケル等)が市場で日々取引されている、という点も「資源型」事業の特徴である。これは「電力型」事業には見られない点である。市場で日々取引されているので、生産物の価格は常に上下し変動している。従って、「資源型」事業は生産物価格の変動リスクが常に伴う。「資源型」事業の事業収入(下記図の青線。以下「収入線」)を概念的に図示してみると、次のようになる。

上記の図では、青色の収入線が波を打っている。つまり、当該資源開発事業で生産・販売する生産物の量が仮に毎年ほぼ一定だったとしても、生産物の価格が上下しているので、収入線も上下してしまう。上記の図では、生産物価格が上昇したときに青色の収入線が上がり、生産物価格が下落したときに青色の収入線が下がっている。

プロジェクトファイナンスを採り上げている金融機関の間でも、実は「資源型」事業の持つ特徴、つまり埋蔵量リスクや上記の価格変動リスクを忌避する金融機関は存在する。そういう金融機関は、プロジェクトファイナンス案件のうち、専ら「電力型」事業を採り上げ、「資源型」事業はほとんど採り上げないとしているようである。(次回に続く)

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Photo by Matteo Catanese on Unsplash

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