【コラム】(プロファイバンカーの視座)第148回 プロジェクトファイナンス超入門(12)

2024.05.23 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


【プロジェクトファイナンスってなに?】

これまで数回にわたって民間の国際組織Equator Principlesのプロジェクトファイナンスの説明・定義を見てきました。もう一度このEquator Principlesによるプロジェクトファイナンスの説明・定義の文章を振り返っておきましょう。

Project Finance is a method of financing in which the lender looks primarily to the revenues generated by a Project, both as the source of repayment and as security for the exposure.
「プロジェクトファイナンスとは、主としてプロジェクト(事業)から生まれる収入を、レンダーが返済の原資とし、さらに担保にもしているファイナンス手法である」(筆者訳)

この英語の文章の要点は次の3点でした。

  1. プロジェクトファイナンスはファイナンス手法(a method of financing)である。
  2. レンダーは主としてプロジェクト(事業)から生まれる収入を返済の原資としている。
  3. レンダーは主としてプロジェクト(事業)から生まれる収入を担保としている。

1点目の「プロジェクトファイナンスはファイナンス手法(a method of financing)である」という点については、これは「プロジェクトファイナンスは事業向け融資である」と理解することができると説明してきました(第145回ご参照)。また、2点目の「レンダーは主としてプロジェクト(事業)から生まれる収入を返済の原資としている」という点については、言外の意味するところも推し量って「プロジェクトファイナンスはノンリコース・ローン」と理解できる旨説明してきました(第146回第147回ご参照)。ここで、これら2点を下記のようにまとめておきたいと思います。

つまり、民間の国際組織Equator Principlesのプロジェクトファイナンスの説明・定義においても、表現方法に違いは見られますが、プロジェクトファイナンスを「事業向け融資」であり、また「ノンリコース・ローン」であると捉えている、ということになります。

さて、民間の国際組織Equator Principlesのプロジェクトファイナンスの説明・定義を採り上げる前に、国際協力銀行のプロジェクトファイナンスの説明・定義を見てきました(第143回ご参照)。国際協力銀行のプロジェクトファイナンスの説明・定義は次の通りでした。

「プロジェクトファイナンスとは、プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトの生み出すキャッシュフローに限定する融資スキームです。」

このプロジェクトファイナンスの説明・定義は2つに分けて見ることができるというお話をして、次のように2つに分けました。

  1. プロジェクトファイナンスは融資スキームです。
  2. プロジェクトファイナンスは、プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトの生み出すキャッシュフローに限定している。

プロジェクトファイナンスの説明・定義について、民間の国際組織Equator Principlesのものと国際協力銀行のものとを、それぞれ要素に分解して比較してみると、両者は結局同じこと言っているということがお分かりいただけたかと思います。つまり、民間の国際組織Equator Principlesのプロジェクトファイナンスの説明・定義の1点目「プロジェクトファイナンスはファイナンス手法(a method of financing)である」は、国際協力銀行のプロジェクトファイナンスの説明・定義の1点目「プロジェクトファイナンスは融資スキームです」に対応しています。そして民間の国際組織Equator Principlesのプロジェクトファイナンスの説明・定義の2点目「レンダーは主としてプロジェクト(事業)から生まれる収入を返済の原資としている」は、国際協力銀行のプロジェクトファイナンスの説明・定義の2点目「プロジェクトファイナンスは、プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトの生み出すキャッシュフローに限定している」に対応しています。

(次回に続く)

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ UnsplashJustin Lauriaが撮影した写真

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