2026.01.22
【コラム】(プロファイバンカーの視座)第175回 プロジェクトファイナンス超入門(39)
2025.07.10 連載コラム
【借入金の通貨の選び方4~為替の問題】
前回のコラムの最後の結論、これは非常に重要です。重要ですから、もう一度繰り返します。つまり、『海外事業の収益に与える影響度合いについては、「金利」の変動よりも「為替」の変動の方が遥かに大きい』という点です。金利の変動も為替の変動も海外事業の収益に影響を与えます。これはどうしても避けられません。特に為替の変動の影響を受けるのは海外事業の常です。国内の事業であれば金利の影響は受けても、為替の影響はほとんど受けないというのが普通です(注1)。しかし、海外事業で為替の影響を受けないということはまずありません。
海外事業の収益に与える影響度合いについては、金利の変動よりも為替の変動の方が遥かに大きいという事実と、海外事業で為替の影響を受けないということはないという事実とを踏まえたうえで、いよいよ海外事業において仮に為替の変動があっても収益への影響を抑える方法はないのかという、いわば対応策を考えてゆきたいと思います。為替の変動があっても海外事業の収益への影響を抑える対応策を考えるにあたって、ここでまずケーススタディをご紹介したいと思います。
【ケーススタディ】

上記のケーススタディの内容を簡単にご説明します。事業の内容は豪州(オーストラリア)での陸上風力発電事業です。事業主(出資者、スポンサー)は豪州の企業と日本の企業の2社です。この事業を推進するために両社で豪州国内に事業会社を設立しています。同事業会社がプロジェクトファイナンスで借入をする予定です。事業会社は既に地元の大手電力会社と期間20年の売電契約(PPA)を締結しています。売電収入は地元の大手電力会社から支払われるので、すべてAUD(豪ドル)建てです。そして、売電価格の水準は相応な水準で、好立地で風況の良い用地も確保できているので、事業の採算は十分満足のゆく水準が期待できます。この陸上風力発電の建設には約2年かかります。プロジェクトファイナンス・レンダーとは融資期間20年の融資を受けるということで話を進めています。融資期間20年のうち、建設期間(ほぼ融資の実行期間と一致)が2年で、返済期間は18年です。EPC(建設)契約の内容も固まっています。風力発電の主要機器は欧州から輸入するため、EPC(建設)契約の代金支払いのうち70%はEuro(ユーロ)建てで支払う必要があります。それから現場での設置作業は地元の建設会社が主に担うので、EPC(建設)契約の代金支払いのうち20%はAUD(豪ドル)建てで支払います。残り10%はUSD(米ドル)建てで支払います。最後に、関連する各通貨の借入金利の水準ですが、現状AUD(豪ドル)の借入金利の水準が最も高く、次いでEuro(ユーロ)、USD(米ドル)と続き、JPY(日本円)の借入金利の水準が最も低いとします(注2)。
さて、上記のケーススタディで、みなさんにお伺いしたいのは次の点です。
「このケーススタディの事例でプロジェクトファイナンスの手法で借入をする際に、借入金の通貨はどの通貨を選べば良いでしょうか」
この問いを検討していただくに当たって最もご留意いただきたいポイントは、「(借主となる)事業会社が将来為替の変動によって、事業収益に影響が出ないようにしてほしい」ということです。少し種明かしをしておきますと、(借主となる)事業会社の為替対策は借入金の通貨選びが鍵を握っています。
(次回に続く)
注1)
輸出業や輸入業に関わる方は国内で業務をしていても為替の影響を受けます。
注2)
ケーススタディでの各通貨の借入金利の水準は必ずしも現状を正確に反映したものではありません。あくまでケーススタディとしてご理解ください。
プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明
*アイキャッチ UnsplashのMikey B.が撮影した写真
【バックナンバー】
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