2025.03.23
【コラム】(プロファイバンカーの視座)第167回 プロジェクトファイナンス超入門(31)
2025.03.13 連載コラム
【借入金利の低下と事業利回りの上昇(簡易計算法)】
前回は「借入金利の上昇によって事業利回りはどのくらい低下するのか」という視点で、その簡易な計算方法をご紹介しました。借入金の残高は返済が進むにつれて徐々に減少してゆきますが、この簡易計算方法では借入金残高の減少を想定していません。また税金も考慮していません。あくまでざっくりとした概算ではあります。
さて、米国の政策金利は2024年9月から引き下げが行われています。2024年末までに計3回の引き下げが実施され、計1.00%の引き下げが行われました(注)。つまり、米国ドルの政策金利はもはや引き上げ局面にはなく、引き下げ局面にあります。これは米国の物価上昇(インフレーション)が落ち着いてきたからです。前回は「借入金利の上昇によって事業利回りはどのくらい低下するのか」というお話をしてきたわけですが、米国ドルの金利水準は引き下げ局面に入っているので、今回は同じ簡易計算式を使いながら、「借入金利の低下によって事業利回りはどのくらい上昇するのか」を見てゆきたいと思います。
【借入金利の低下によって事業利回りがどのくらい上昇するのか】
簡易計算式は次のようになります。
前回ご紹介した簡易計算式と異なるところは2か所です。「借入金利の上昇分(%)」が「借入金利の低下分(%)」に代わっています。そして「事業利回りの低下分(%)」が「事業利回りの上昇分(%)」に代わっています。
今回も具体例を用いてご説明いたします。
- 「借入金利の低下分(%)」ですが、米国ドルの政策金利は2024年9月から12月までの間に1.00%引き下げられましたので、ここでも借入金利は7%から6%に1%低下したものとしてみましょう。
- 「借入比率(%)」は前回の具体例と同様に70%のままにしておきます。
「借入金利の低下分(%)」は1%、「借入比率(%)」は70%として、上記の簡易計算式を使って「事業利回りの上昇分(%)」を簡易に計算することができます。そうしますと「事業利回りの上昇分(%)」は0.7%(1% x 70%)になります。つまり、この例では借入金利が1%低下したことにより、事業利回りは0.7%上昇する、ということです。下記に具体的な数値を入れた計算式をお示しします。
【借入金利の低下によって事業利回りがどのくらい上昇するのか(具体例)】
前回、借入比率の高い事業、例えば借入比率が80%といった事業は、借入比率70%の事業よりも借入金利が上昇したときの影響が大きい、と指摘しました。「影響が大きい」というのは、借入金利が上昇したときに事業利回りの低下分が大きいという意味です。
今回は借入金利の低下した場合を見ております。借入金利が低下した場合、借入比率の高い事業はどうなるでしょうか。例えば借入比率が80%だとしますと、借入金利1%の低下は事業利回りを0.8%上昇させます(1% x 80%)。つまり、事業利回りの上昇分も大きいです。借入比率の高い事業は借入金利が低下してくれると、恩恵が大きいです。要は借入比率の高い事業というのは、借入金利の水準の上下動に大きな影響を受けるということです。
注)
2024年9月以降の米国の政策金利の引き下げの時期と引き下げ幅は次の通りです。
2024年9月 0.50%
2024年11月 0.25%
2024年12月 0.25%
プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明
*アイキャッチ UnsplashのSven Brandsmaが撮影した写真
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