【コラム】(財務モデリングの最先端)第34回 財務モデルにおける差異分析の手法

2021.04.16 連載コラム

ナレッジパートナー:川井 文哉


第33回のコラムでは、異なる勘定科目についての対応関係を設定するマッピングという手法について紹介し、予実管理モデル構築の上で重要なテクニックの1つであると解説した。第34回のコラムでは、財務モデルを更新していくなかで、差異を以下に分析していくかという実務的な手法をいくつか紹介する。

差異要因の分類 – 入力前提 vs 計算前提

1つの企業に対する1つの事業であっても、作成者や構築のタイミング、前提条件の見通しなどによって、複数の財務モデルが構築されることがある。よくあるケースとしては、1つの案件に対して複数のスポンサー(株主)が共同出資を検討しているケースだ。このような場合には、それぞれのスポンサー毎に財務モデルを構築し、しばしば独立した視点で採算性を分析することが少なくない。このような場合は検討事業が同じであるにも関わらず、複数の財務モデルが作成されることになり、それぞれのモデルには差異が存在する。

仮にアウトプット項目が同じであると仮定すると、差異の要因は大別して2種類に分類できる。入力前提が異なるか、計算前提が異なるかの2種類だ。

財務モデルにおける入力前提とは、計算の元となる単価やインフレ率といった入力値のことだ。当然、2つのモデルで異なる入力値が用いられている場合、計算結果も異なるものとなる。しばしば差異分析の要因となるのは、どちらかと言えば計算前提だ。例えば、初年度 40%の発電端効率から毎年0.1%の劣化を考える際に、前年 – 0.1%と計算するか、前年 * (100% – 0.1.%) と計算するかでは微妙に計算結果が異なってくる。他にも、会計方針についてPL計上するか、資産計上するかの選択の違いや、計算の精緻化による違いなど、同一事業についてのモデルなのにも関わらず、モデルによって計算結果が大きくことがある。

総額比較

例えば、1つの例として減価償却費の値が2つのモデルで大きく異なるとしよう。差異分析というと、すぐに毎期の金額を比較しがちだが、皆さんにやっていただきたい差異分析の第1歩として、まずはプロジェクト期間の総額を比較して欲しい。 減価償却の差異として、もしかすると設備投資の金額そのものが異なる可能性もあるし、固定資産の取得原価に算入してある費用項目が異なるのかもしれない。もしくは、建設中の支払利息について、一方は費用計上し、一方では取得原価に含めて計算しているのかもしれない。このように様々な可能性があるものの、総額を比較すると、そもそも無視できる差異なのか、無視できない差異なのかも含めて、金額の多寡を正確に把握することができる。この金額によって、どのあたりに差異がありそうか仮説を立てることができるのだ。例えば、建設中の金利支払額と、減価償却費の総額差異が一致していれば、それは高い確率で建中利息についての会計処理方針だという仮説が立てられるし、減価償却費が小さいにも関わらず、固定資産除却損が大きくでているのであれば、償却年数に違いがあるのかもしれない。このように、各年の金額をすぐに見るのではなく、総額で比較することによって、大局を見ながら仮説を立てることができるのだ。

タイミング比較

総額を一致されることができたら、次に各年の金額差異について分析を行う。ここで重要なことは、可能であれば事業計画において差異の多寡にあまり係わらず、差異が発生した早い時期に着目することだ。例えば、1年目から5年目においてはあまり差異が見られないものの、6年目において大きな差異が発生しているとしよう。多くの人は6年目の際に注目して分析をしがちであるが、可能であれば1年目の際に着目して分析を行って欲しい。年数が後ろになればなるほど、複合的な要素が影響している可能性が高いため、要因分析という意味では運転開始1年目 ~ 3年目の差異を中心に分析を行ってみて欲しい。

東京モデリングアソシエイツ株式会社
マネージングディレクター
川井 文哉

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