【コラム】(財務モデリングの最先端)第27回 YAGNI Principle

2020.12.11 連載コラム

ナレッジパートナー:吉村 翔


エンジニアの世界では、YAGNI Principle という主要原則があり、「必要のないものは、必要になるまで作らない」という考え方が強く支持されている。財務モデリングも、限られた時間の中でシミュレーションを構築しなければならないという点で、アジャイル開発工程と似た部分があり、財務モデル構築を行う上で非常に重要な、設計に指針に繋がる考え方でもある。

YAGNI は、 「You ain’t gonna need it!」(それは要らない!) を省略したものだ。財務モデルを構築していると、財務モデルの構築に慣れた担当者であればあるほど、生半可な実力があるが故に色々な機能を付与したがる傾向にある。

  • 為替レートの影響を加味するため、米ドルと円建ての計算を正確に反映しよう
  • 将来的にモニタリングに使えるように、月次でモデルを作成しよう
  • 資金調達スキームが柔軟に変更できるよう、様々な調達トランシェを用意しておこう
  • ダウンサイドケースに備えて、追加出資のシミュレーションを構築しておこう
  • 買収対象先の正確なPL把握のため、現地の会計基準を詳細に反映しよう

これらをうまく必要十分に取捨選択するために、筆者が財務モデルに取り掛かる際に常に心にとめている2つの質問がある。

  1. この財務モデルを使って答えたい問いは何か
  2. この財務モデルを使って伝えたいストーリーは何か
  • 1の答えたい問いに関する指標が財務モデルのアウトプットとして定義されるべきである。例えば、投資検討モデルであれば想定されるリターンやハードルレートに基づく想定投資額がそれにあたる。 また、2の伝えたいストーリーが財務モデルのインプットパラメーターとして定義され、可変とすべき項目である。例えば、「対象会社にとって将来のM&Aが成長の鍵である」となれば、M&Aの規模別パイプラインやその確度など細かく設定可能とするべきであり、極端なことを言えばそれ以外の項目(例えば対象会社スタンドアロンの財務諸表)は全て値張りの固定数値として持たせてしまうといったことも現実的に考え得るのである。

財務モデルを構築している途中、「これから必要になるかもしれないから…」という理由で、何かを追加的な機能や計算をしようとしたら、白い紙にペンで大きく以下の言葉を書いて、デスクに貼っておくようにしよう。

「You are NOT gonna need it!」

東京モデリングアソシエイツ株式会社
マネージングディレクター
吉村 翔

*アイキャッチ フォトマルクスSpiskeUnsplash

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