【コラム】(財務モデリングの最先端)第24回 財務モデルにおける串刺し計算の活用方法および留意点(2)

2020.10.30 連載コラム

ナレッジパートナー:吉村 翔


前回は串刺し計算の概観を捉え、以下のような簡単な例を挙げて串刺し計算の完成形を確認した。

例)Asset_01、Asset_02、Asset_03という同一構成(中身の具体的な数値は異なる)の3シートにおける2020年から2024年のRevenueを、Asset_Totalシートで合計する。

本稿でも、引き続き上記の例を用いて、数式の構築方法を説明する。

上記右のエクセル画面の数式バーに表示されている数式を、1文字ずつタイピングしても当然問題ないのだが、少し煩雑に感じることであろう。そこで以下の方法で数式を構築することを推奨する。

串刺し計算構築ステップ

① 左からAsset_01シート、Asset_02シート、Asset_03シート、Asset_Totalシートの順に配置する(Asset_Totalシートは先頭(一番左)でも可)
② Asset_Totalシートの2020年Revenue(セルC4)を選択し、「=SUM(」と入力する
③ ①の数式がアクティブなまま、Asset_01シートに移動し2020年Revenue(セルC4)を選択する
④ この時点で数式バーの表示が「=SUM(Asset_01!C4」となっていることを確認する
⑤ Shiftキーを押しながらAsset_03シートを選択する
⑥ Asset_01、Asset_02、Asset_03シートが全て選択された状態となり、数式バーの表示が「=SUM(‘Asset_01:Asset_03’!C4」となっていることを確認する
⑦ 数式バーの末尾に「)」を入力しEnterキーを押す
⑧ 想定の結果(Asset_01シート、Asset_02シート、Asset_03シートの2020年の売上高の合計値)が表示されていることを確認する

全8ステップと非常に細かく記載したが、実際に手を動かして実行してみると、非常に直感的に数式が構築できたのではないであろうか。

なお、上記の例では、Asset_01シートからAsset_03シートの合計として串刺し計算を構築したが、串刺し計算を使用する際には対象範囲の前後に明示的な空白シートを挿入(例えば、Asset_StartとAsset_End)し、串刺し計算の対象範囲に含めることを推奨する。

Asset_StartとAsset_Endのような空白シートをブックマークシートと呼ぶが、これらを使用することで、上記の通り串刺し計算の対象範囲が明示化されるとともに、資産の売却や新規買収を検討する際に、検討対象資産のシートのみブックマークの内側または外側に移動するだけで、当該影響値を外すまたは含めたケースの分析というのが非常に簡単に実現可能となる。

実際に、筆者もかなり多くの案件で、複数資産や事業の評価を目的としたモデル構築の場面に遭遇する。最近だと比較的小規模な太陽光発電所をまとめて買収検討を行った際や、保有する発電アセットに関して中長期的に燃種比率をコントロールしていくための戦略立案の際に、串刺し計算を使用してモデルを構築した。このことからも、串刺し計算は実務において有用な機能であることが分かってもらえるであろう。

以上、具体的な串刺し計算の数式入力ステップを紹介した。 次稿では、串刺し計算を十分に活用するために理解しておくべき留意点について説明する。

東京モデリングアソシエイツ株式会社
マネージングディレクター
吉村 翔

*アイキャッチ フォトアリサChattasaUnsplash

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