【コラム】(財務モデリングの最先端)第29回 財務モデルにおけるフォーマット(2)セルルール編

2021.01.22 連載コラム

ナレッジパートナー:川井 文哉


第28回のコラムでは、フォーマットのルールは「シートフォーマット」と「セルフォーマット」の2つのルールに大別でき、シートフォーマットとして情報を列ごとに厳密に管理する重要性について述べた。今回は、セルフォーマットについて具体的な例を紹介する。

ルール1: 表示形式や単位を揃える

セルフォーマットのルール第一としては、最も基本的な表示形式や単位を揃えることが重要になる。例えば、あるセルではマイナス100万円が (1,000,000) と括弧書で表示されている一方、他の個所では -1,000,000 とマイナス記号が用いられていたりしてはいけないし、日付の表示が 2021/1/1 となっている場所がある一方、21 Jan 1などという表示がされている場所が混在するのは望ましくない。一例となるが、東京モデリングアソシエイツ (TMA) で2021年現在において用いているルールは以下の通りとなる。

日付: 1 Jan 21
正の数値: 1,000
負の数値: (1,000)
0の数値: –
パーセント: 10.0%

小数点の桁数などは案件によって異なるが、モデル全体として統一されていることが望ましい。また、単位については全て揃っている必要はなく、例えば財務諸表としての表示は100万円単位である一方、入力は円単位であったとしても構わない。重要なことは計算の中でコロコロと単位変換を行わないことであり、可能な限りシンプルな計算を維持しつつ、入力の簡便性のバランスを取りながらモデルを作成することになる。

ルール2: セルの情報に応じて文字色・背景色を統一する

第28回のコラムでは、列ごとに表示する情報を厳格に定義し、例えばラベルはD列、単位はK列などと厳しいルールを設けるべきだと解説した。この点を踏まえた上でも、セルごとに詳細なフォーマットを設定してやることで、より分かりやすくモデルを表現することができる。東京モデリングアソシエイツ (TMA) で2021年現在において用いているルールは以下の通りとなる。

弊社のルールは非常に細かいので一部のみの抜粋となるが、入力前提値を大別して、「変更できるもの」と「変更できないもの」の2つに分類している。変更できるものは容易に想像ができると思うが、変更できない前提値というのは、例えば12カ月の「12」という値であったり、100%から減価していく計算のような場合の「100%」という値だ。これらは計算前提の一部となる値なので、値を変更すると正しく機能しなくなってしまうため、変更できない入力前提として上記のようなフォーマットを用いて管理している。

その他にも、VBAを用いて値を出力する箇所や、計算の過程で論理値を用いる箇所などを通常と異なるフォーマットでハイライトを行っている。こういった条件に基づいたセルのフォーマットルールを適用することで、モデルを一目見ただけで網羅的な情報を伝えることができる。

東京モデリングアソシエイツ株式会社
マネージングディレクター
川井 文哉

*アイキャッチ フォトトルガUlkanUnsplash

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