【コラム】(財務モデリングの最先端)第30回 投資検討モデルから事業管理モデルへの移行

2021.02.05 連載コラム

ナレッジパートナー:吉村 翔


財務モデルは、投資検討のみならず投資実行後の事業管理に用いられる。
実際に著者が頻繁にご相談いただく内容の一つに、投資検討時に作成したモデル(以下、「投資モデル」という。)を投資実行後の事業管理(以下、「管理モデル」という。)にも用いていたら、モデルが次第に複雑化してしまい、これ以上継続して使用していくのが困難であるため、何か良案はないかというものである。 

上記のようなケースにおける第一の推奨案としては0からの再構築を推奨している。当然、将来計画の計算ロジックなど投資モデルから使いまわせる事項も少なからず存在するが、投資モデルと管理モデルでは目的や状況の違いが大きすぎるためである。

例えば、財務モデルの一般的なアウトプットとして財務諸表が存在するが、投資モデル作成時には利用可能な情報の制限や各項目の影響度合いから、対象事業のビジネスモデルを勘案した上である程度割り切った粗い区分での設定が行われることが多い(例えば、販管費の内訳として人件費、広告宣伝費、その他販管費の3区分としそれ以上細分化しない等)。一方で、事業管理モデルでは、実績値を反映していく必要があるので、その実績値を管理している勘定科目(例えば、人件費でも給与、賞与、福利厚生費、雑給、その他人件費の細分化をする等)などに左右される場合もある。

その他の頻出例として、デットサイジングの機能がある。投資モデルでは、将来キャッシュフローから借入可能額および返済スケジュールを計算(ゴールシーク)する複雑な機能を必要とするケースが多いが、事業管理フェーズでは、借入額および返済スケジュールは既知であるはずであるため、通常、管理モデルにおいては複雑な計算は不要であり入力項目することができるため、その部分に関してはモデルをかなり単純化することができる。

上記の通り投資モデルと管理モデルにおいて、財務モデルの使用目的や利用可能な情報が大きく異なるため、投資モデルを微調整しながら事業管理モデルとして使い続けることは困難であると考え、0からの再構築を推奨している。当然ながら財務モデルに含まれる結果は、レンダーをはじめとする様々なステークホルダーが参照する数値となるために、将来計画の前提条件が変わることは避けるか、変更の必要があるのであれば、その差異内容を十分に説明できるようにする必要がある点には留意が必要である。

東京モデリングアソシエイツ株式会社
マネージングディレクター
吉村 翔

*アイキャッチ フォトウィルフランシスUnsplash

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