【コラム】(財務モデリングの最先端)第23回 財務モデルにおける串刺し計算の活用方法および留意点

2020.10.16 連載コラム

ナレッジパートナー:吉村 翔


複数の太陽光発電所を買収する際の投資検討モデルや、ポートフォリオ管理を目的とした財務モデルにおいて、個別資産のアウトプットをまとめ上げ、合算アウトプットを作成するといったことが、財務モデリングにおいて求められることがある。

その際に活躍するのが、串刺し計算というエクセル機能である。なお、Microsoftの公式サポートページでは当該機能のことを3D集計として紹介されているが、実務では串刺し計算という呼称の方が頻繁に使われている印象があるため、本稿では串刺し計算機能という呼称を用いて紹介を進めていく。

まず、串刺し計算機能を使用することで、連続した複数シートの同じセル番地を加算するということが可能になる。

上図の例では、Asset_01、Asset_02、Asset_03という同一構成(中身の具体的な数値は異なる)の3シートにおける2020年から2024年のRevenueを、Asset_Totalシートで合計している。上記のように2、3シートだけであれば通常の加算やSUM関数の使用でシートを移動しながらセル番地を指定することも可能であるが、10シート、20シート、時には100シートを超えるシートの集計を必要とする場面では、数式構築作業も煩雑になりエラーリスクも増大してします。

それに対して串刺し計算機能を使うと、数式の構築がとても容易なことに加え、非常に簡潔な数式で表現することができるため、後からレビューをする際にも負担を軽減することができる。

それでは、実際にどのように串刺し計算を構築するかを紹介していく。 まず結論から確認すると、串刺し計算を使った場合、数式は以下のようになる。

こちらを解釈すると以下のようになる。
「Asset_01から(:記号)Asset_03シートの(!記号)C4セルを加算する」

* シート名に空白が含まれる場合には、以下のようにシート名を”で括る必要がある点には留意が必要ある。
=SUM(‘Asset 01:Asset 03’!C4) (シート名に含まれるアンダースコア(_記号)が空白だった場合)

最終的な数式の完成形を示したが、こちらの数式を暗記し、手入力する必要はない。 次回以降において、より直感的に数式を構築する方法および、串刺し計算を使用する場合の留意点について考察していきたいと思う。

東京モデリングアソシエイツ株式会社
マネージングディレクター
吉村 翔

*アイキャッチ フォトアリサChattasaUnsplash

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