【レポート】PPP/PFIにおけるセカンダリー・マーケットの可能性

2017.08.04 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:片桐 亮


Ⅵ. エクイティの譲渡に伴う影響

 管理者側の視点から見たエクイティの譲渡によるPFI事業への影響については、以下のとおり、英国会計検査院のレポートにおいて報告されている。

 上述の通り、英国においてセカンダリー・マーケットの活動が活発化した2006年時点のレポートによれば、セカンダリー・マーケットの形成により、マーケットの効率化による資本コストの軽減や、ポートフォリオで管理することによるコストの効率化、ファンドマネジャーが事業に関与することによる事業価値向上余地が見込まれる等、各種メリット面が強調されていた。

 一方、直近の2012年時点のレポートでは、ポートフォリオで管理することによるスケールメリットなどの効果は限定的であり、PFI事業のコスト削減効果や価値向上等については、あまり効果が見込まれないと報告されている。

 英国では、2006年から2012年の間に、政権の交代や金融危機の発生に伴う資金調達コストの上昇が発生し、2011年以降、英国財務省ではPFI制度の抜本的な見直しである『PF2[*7]の検討が進められている最中にあった。PFI制度見直しの背景として、エクイティの譲渡やリファイナンス等に伴う投資家による過度な利益享受等の不透明性が指摘されていたことから、2012年のレポートでは、エクイティの譲渡について比較的ネガティブに報告されている可能性があるが、いずれにしても、セカンダリー・マーケットの形成による効果は、PFI事業のコスト削減効果や価値向上よりも、多様な投資家がPFI事業に参画し、資金の出し手が増えるという点が大きいことは間違いないだろう。

[*7] PF2の詳細については、「PPP/PFIの新たなモデル(1) 英国PF2における官民JV型PPP/PFI」を参照されたい。
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/audit/pub/jp-pub-ppp-20130926.pdf

【図表4 英国会計検査院によるエクイティの譲渡に伴う管理者側のメリットとデメリットの比較と変遷】  (出典:National Audit Office”Update on PFI debt refinancing and the PFI equity market” 及び “Equity investment in privately financed project”より、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成)

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