【レポート】PPP/PFIにおけるセカンダリー・マーケットの可能性

2017.08.04 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:片桐 亮


Ⅶ. わが国へのインプリケーション

 以上、英国のアベイラビリティ・ペイメント型PFIを中心としたセカンダリー・マーケットの現況について整理を行った。英国における状況を踏まえ、わが国における3つの示唆を以下に示したい。

 第一に、「Ⅱ.対象事業の特徴」にて示した、英国のアベイラビリティ・ペイメント型PFIにおける資本構成は、わが国のサービス購入型PFIにおける資本構成と類似しているという点である。わが国のサービス購入型PFIの実施にあたって設立するSPCは、イニシャルコストにおけるおよそ9割超に相当する資金を銀行からのプロジェクトファイナンス(シニアローン)で調達し、残りの1割弱をSPV株主による出資または株主劣後ローン等で補完することが一般的である。英国に比べて、株主劣後ローンの金利は低く、(僅少ではあるものの)SPVの残余利益は内部留保することが一般的となっているが、株式と株主劣後ローンを一体で譲渡することで、魅力的な投資対象となる可能性はある。

 第二に、「Ⅲ.プライマリー投資家、セカンダリー投資家」にて示した英国PFIマーケットにおける「アセット・リサイクリング」という概念である。わが国において大規模なサービス購入型PFiを担うことのできるプライマリー投資家は、大手ゼネコンや一部リース会社等、特定のプレーヤーに限定されている。そこで、施設の引渡しが完了し、安定稼働期に移行した段階で、プライマリー投資家が保有するエクイティの譲渡を認めることで、プライマリー投資家は新たなPFI事業に資金と人材を投入することができるようになる。また、英国と同様、年金基金等の機関投資家は、セカンダリー投資家として、安定稼働に移行したPFI事業に対し、投資を行うことができる。上記のような「アセット・リサイクリング」の環境を構築することで、わが国のPFI市場全体の持続性を確保することが可能となる。

 第三に、「Ⅵ.エクイティの譲渡に伴う影響等」に示した通り、エクイティの譲渡に伴うPFI事業への効果を過大視しないことである。英国会計検査院のレポートによれば、エクイティの譲渡を行うことで見込まれるコスト削減効果や価値向上効果は比較的限定的との見解が示されていた。わが国においてセカンダリー・マーケットを構築する場合においても、エクイティ譲渡に伴うPFI事業本体への効果を過大視せず、多様な投資家等によるPFI市場への参入や「アセット・リサイクリング」の効果等を目的とした制度等の検討が進められるべきである。

以上、本レポートでは、英国のアベイラビリティ・ペイメント型PFIを中心としたセカンダリー・マーケットの現況について整理を行った。

本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。

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*アイキャッチ Photo by Heidi Sandstrom. on Unsplash 

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