【レポート】PPP/PFIにおけるセカンダリー・マーケットの可能性

2017.08.04 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:片桐 亮


Ⅲ. プライマリー投資家とセカンダリー投資家の特徴

 プライマリー投資家がエクイティを譲渡する背景として、PPP/PFIプロジェクトに係る「アセット・リサイクリング」という考え方がある。「アセット・リサイクリング」とは、長期にわたるインフラ事業において、特定のプロジェクトに資金を滞留させず、新たなプロジェクトへの積極投資を推進する考え方である。

 英国のPFIにおいては、建設会社がプライマリー投資家としてエクイティ投資を行い、公共施設等の建設が完了した後、新たなプロジェクトへの投資資金を得るため、セカンダリー・マーケットにおいて、エクイティの譲渡等を行うというケースが多い。上記取組みを推進することで、建設会社の資金における「アセット・リサイクリング」が可能となる。セカンダリー・マーケットの存在を前提として、英国におけるPFIマーケットの持続性が確保されているのである。

 英国のセカンダリー・マーケットにおけるセカンダリー投資家の参入状況は、図表3のとおりとなっている。英国のセカンダリー・マーケットにおけるトランザクションが活発化したのは、2006年頃からである。主なセカンダリー投資家としては、インフラファンドに加え、建設会社が買い手となるトランザクションが主流となっていた。その後金融危機等発生以降、2009年頃からは、オフショア・インフラファンドや年金基金が買い手となるトランザクションが急激に増加している。年金基金やオフショア・インフラファンドへ資金提供を行う投資家は、金融投資家である可能性が高いことから、2008年以降、英国のPFIにおける金融投資家の存在感が高まっているものと考えられる。

 なお、セカンダリー投資家となるインフラファンドの中には、建設会社自らが機関投資家等から投資資金を集めて立ち上げたファンドも存在する。上記のインフラファンドは、建設会社が投資および整備を行ったプロジェクトについて、安定稼働期に移行した後、自らのエクイティをインフラファンドに譲渡し運用している。

【図表3 英国のセカンダリー投資家別のPFI事業への累計投資額】
  (出典:European Service Strategy Unit “PPP Wealth Machine”より、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成)

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