【レポート】PPP/PFIにおけるセカンダリー・マーケットの可能性

2017.08.04 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:片桐 亮


Ⅳ. リターン水準

 英国会計検査院のレポートによれば、英国PFIにおける事業契約締結時点での想定エクイティIRRは、概ね12-15%程度である[*4]。しかし、プロジェクトの安定稼働段階においてプライマリー投資家がセカンダリー・マーケットにてエクイティを譲渡することにより、前倒しで投資回収が可能であるため、プライマリー投資家の譲渡時のエクイティIRRは概ね15-30%程度まで上昇する。[*5]その一方で、エクイティを取得したセカンダリー投資家のエクイティIRRは、概ね5-8%程度[*6]まで低下する。セカンダリー・マーケットに放出されるプロジェクトは、リスクの高い建設段階のフェーズを経て、安定的な運営段階に入っていることから、セカンダリー投資家等のエクイティIRRが、当初事業契約時点よりも低い水準に留まっていても許容される構図となっている。

[*4] National Audit Office(2012) “Equity investment in privately financed projects” 参照
[*5] 同上
[*6] 同上

Ⅴ. エクイティ譲渡にあたっての制限

 エクイティ譲渡に当たっての制限が、法律やガイドライン等において特段定められているわけではないが、施設完工後一定期間(概ね6ヵ月程度)においては、プライマリー投資家によるエクイティの譲渡に制限が課せられることが一般的である。ただし、施設等の整備期間が長期にわたる事業では、施設の整備期間中であっても譲渡が認められるケースもある。

 この場合、オペレーション会社がプライマリー投資家であった場合において、自らのエクイティをセカンダリー投資家に譲渡した後も、引き続き、サブコントラクターとして施設のオペレーションを担うことが一般的である。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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