【コラム】(プロファイバンカーの視座)第34回 PF組成しやすい事業(20)「資源型」と「電力型」の比較

2019.08.22 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


「資源型」事業について、その多くは輸出事業である、という点も既に指摘した。輸出事業であるということは生産物の購入者が海外に存在するということで、これは事業収入の源泉が海外にあるということになる。事業収入の源泉は事業所在国には(ほとんど)ない。さらに、生産物の購入者は複数存在しているのが普通である。これらの点は、国内向け事業が通常で、オフテイカーも1社であることが多い「電力型」事業(例えば発電事業)と対比される。生産物の購入者が海外に複数存在するというのは「資源型」事業の強みであり特長である。

さて、上記のような「資源型」事業の強みや特長は、特に新興国や低所得国において発揮される。どういうことかというと、「プロジェクトファイナンスなら新興国や低所得国でも多額の資金調達が可能」というようなコメントをときどき見かけるが、このコメントは「資源型」事業によく当てはまる。

「電力型」事業ももちろん新興国で行われてはいるが、事業所在国の所得水準をよく見てゆくと、そこにはおのずと下限があるようである。例えば、インドネシアやベトナムの発電事業なら問題ないが、もっと所得水準の低い東南アジアの新興国で発電事業ができるかというと、現行では容易ではない。これは長期に亘りオフテイカーに電力代金を支払ってもらえるのかという観点で事業を評価してゆくときに、所得水準のかなり低い新興国では評価結果が厳しくなるからである。

これに対して、「資源型」事業では事業の是非の評価は異なる。事業所在国の所得水準云々は事業評価をするうえでの決定的な要素ではない。例えば、パプアニューギニアのLNG(液化天然ガス)事業は良い例であろう。この事業は通称PNG LNGと呼ばれている。米国の石油メジャー、エクソンモービル社が主導している。

PNG LNG事業は今から10年前の2009年に140億米ドル(約1兆5000億円)に及ぶプロジェクトファイナンスの融資契約書を銀行団との間で締結した。事業所在地はパプアニューギニアの山間地である。2009年のパプアニューギニアのGDP(国内総生産)を調べると、116億米ドル(約1兆2000億円)である(注)。一国のGDPの規模を上回る融資金額をプロジェクトファイナンスで民間の一事業が調達したということになる。ちなみに、一案件のプロジェクトファイナンスの融資金額が140億米ドルというのは、当時としては最高額だと言われている。最大規模のプロジェクトファイナンスがパプアニューギニアで組成されたということになる。もっとも、3年後の2012年に組成されたイクシスLNG事業向けのプロジェクトファイナンスの融資金額は200億ドル(2兆円超)に及び、最高金額の記録は塗り替えられている。

なぜ、パプアニューギニアで1兆円を超える大型のプロジェクトファイナンスの組成が実現できたのか。それはパプアニューギニアに優良な天然ガス田が発見されたからである。「優良な」という意味には「経済性の高い」という意味も含まれている。要は事業所在国はパプアニューギニアではあっても、この天然ガスを採掘・生産して液化のうえ輸出すれば、好採算の事業になることが判明したからである。そして、自国の資源を輸出して外貨を稼げば、パプアニューギニアにとっても経済面で大いに寄与するところが大きい。

パプアニューギニアで生産されているLNG(液化天然ガス)のうち、現在約半分は日本に輸出されている。日本はパプアニューギニア産のLNGを輸入して、パプアニューギニアの経済発展にも間接的に貢献している。

注)世界銀行の統計資料Databank (https://databank.worldbank.org/

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

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