【講演録】米国道路PPP

2019.10.30 ナレッジ

ナレッジパートナー:中村 裕司


そこで民間の事業者に需要予測をもたさないで、しかも運営管理をしてもらえる、そういった支払い方式はないだろうか、とそんな研究がされたんですね。この表の下2つ。

これがあの需要予測が民間事業者に委ねている支払い方式です。リアル・トールというのは、実際に通行料金を徴収する権利が民間事業者にあります。シャドー・トールは無料道路が対象ですので通行料金は徴収しませんが、想定した交通台数、民間事業者が需要予測した通行台数に満たないと民間事業者にペナルティが課せられる。そういう需要予測リスクが民間にあるというところですね。

それに対して上の2つ、2つと言いましても総称としてアベイラビリティ・ペイメントと申しますが、細かく分けるとアベイラビリティ・ペイメントとアクティブ・マネジメント・ペイメントと申したりします。この場合は、需要予測が公共セクターの方にあります。歴史的に申し上げますと、アベイラビリティ・ペイメントは2000年代のはじめにイギリスで発祥しました。それに対して、アクティブ・マネジメント・ペイメントは2009年米国で、フロリダ州のI-595という道路で初めて用いられました。

何が違うかといいますと、リアル・トール以外は支払いの財源が税金です。リアル・トールだけが実際の通行料金です。支払いの基準は上2つがサービス水準、下2つは通行台数です。そして、需要予測は上2つが公共側、下2つが民間側です。概要としては、上2つは交通の量にはまったく無関係。そしてボーナスを払う場合もあれば、ペナルティを取る場合もあるという所が特色です。下の2つはあくまでも、交通量に応じて対価が支払われます。シャドーとリアルの違いは有料道路料金を取るか取らないかの違いだけです。次へ参ります。17ページ。

これはもう皆さんご存知ですね。リアル・トールの場合には利用者から通行料金を取りますよ。で、次のページのアベイラビリティ・ペイメントは利用者の通行料金は公共セクターに税金という形で払われます。というところが違うだけです。次へ参ります。

実際にアメリカでこのリアル・トールからアベイラビリティ・ペイメントにどのように歴史的に変わってきたかというのをまとめたのが次から2、3ページ続きます。まず2006年。2006年を見て頂くと分かるように赤い丸がロングタームリース。アメリカは何故かコンセッションとは言わずにロングタームリースと言いますので、これはコンセッションだと思ってください。それから青い丸がリアルトールコンセッション。西海岸に2つ、東海岸に1つ。そして、緑印のアベイラビリティ・ペイメントはこの時点でまだ存在しておりません。次へ参ります。

2009年ようやく、フロリダ州に2つのアベイラビリティ・ペイメントが出現しました。もちろんその間にロングタームリースもリアル・トールも数は増えております。次。これが2015年ですが、2015年になりますと緑印のアベイラビリティ・ペイメントがいくつあるんでしょうかね、1,2,3・・・9個に増えております。だんだんとアベイラビリティ・ペイメントが増えていることがお分かりになるかと思います。次です。

最新版は2018年です。ここでも圧倒的にアベイラビリティ・ペイメント方式が増えております。このようにいま、アメリカの道路PPP事業の趨勢はアベイラビリティ・ペイメントが大変増加をしつつある。その理由は、リアル・トールでの破綻が相次いだからだと。そういうふうに結論付けすることができます。この表は最近5、6年の米国の道路PPP事業をまとめたものでありますけれども、契約形態のRTとかAPとかいうところをご覧いただくと、いかにAPの数が増えてきているかを実感して頂けるのではないかなと思います。次へ参ります。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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