【講演録】米国道路PPP

2019.10.30 ナレッジ

ナレッジパートナー:中村 裕司


大体世界を概観した所で、米国の道路PPP事業についてご説明をいたします。次です。

アメリカの土木学会で調べたところによりますと、向こう10年間で米国のインフラというのは1.1兆ドル不足するという風に言われております。全体で2.数兆ドルなんですけれども、1.1兆ドルが不足をする。10年間で申し上げますと、午前中の総合政策局の方の資料にありますけれども、日本は十年間で50兆円くらい不足すると言われております。それに対してアメリカは220兆円ぐらい不足しますから、約4.4倍お金が足りない。インフラの維持管理のための、そういう風な資料があります。

最もひどいのはアメリカの土木学会の2017年レポートによりますと、インフラの評価はそこにありますね、「D」。DってDangerousのDなのか、ABCDのDなのか知りませんが、危険域に達していると言われております。

続いて、具体的に米国の道路PPP事業の概要と、それから支払い方式の一つであるアベイラビリティ・ペイメントについてこれからちょっと詳しくお話をしたいと思います。次へお願いします。

事業の概要ですが、PPP事業は米国では次のように類型をされております。

こっちからいきますと、一番公共寄り、公共のリスクが多い場合、これはDBBと言っております。デザイン・ビッド・ビルド。日本でもおなじみの設計と施工を分離する発注方式ですね。そこからずぅ~っと下って行って、資金調達リスクで民間が一番リスクを負担しますという契約形態がDBFOMです。デザイン・ビルド・ファイナンス・オペレート・メンテナンス。これを全部民間がやりましょう。この契約方式がDBFOMです。2つ書いたのは後程ご説明しますが、リアル・トールという実際の有料道路料金ですね。それを原資として運営を行う場合と、アベイラビリティ・ペイメントと後程ご説明いたします支払い方式で収入を賄う場合の2通りに分かれます。次へまいります。

次は民間投資がアメリカでどのように法的に守られてきたか、或いは法を改善してきたかという歴史です。ま、歴史はちょっと眺めて頂く程度で、そうですね、有名な所で言うと1980年の「荒廃するアメリカ」。ここで荒廃するアメリカのインフラに対して警鐘が打ち鳴らされました。そのころから色んなPPP事業への動きが出てきたわけです。色んな法律が出てきておりますが、最新のものはトランプ政権になってからつくられました「Trillion infrastructure plan(トリリオン・インフラストラクチャー・プラン)」というやつですね。それが2017年にできて今日まで生きております。その前のオバマ政権の時はこんなことがありました。昨日まで普通の一般の無料道路だった。それを拡幅するから、拡幅資金を賄うために今日から有料道路だと、そういったような法改正も行われました。次へ参ります。

米国は大分あの、日本とですね、連邦政府並びに州政府による援助資金の構成が違います。大きくは3つに分かれております。てっぺんにあるのは、まぁこの有料道路は独立採算制でいいだろうと、政府が関与する必要ないな、儲かるな。日本に適用しますと首都高さんとか阪高さんのような大変交通需要が多い道路では、国が援助する必要はないだろう、州が援助する必要はないだろう、オール民間でやってくれ、こういう風になっております。それで一番下は無料道路。これはどんなことがあっても民間では経営することが難しいだろうと、だから全て税金で賄いましょう、そういう道路です。

で、着目したいのは真ん中の欄なんですね。信用援助を要するけれども有料道路である。独立採算ではできないけれども、それなりの援助をすれば、有料道路事業として民間でやっていっていただけるのではないか。それがココです。そのためにいくつかの政府援助制度が整っております。それが右側の表なんですね。一番あの、金額が多いのは一番上のTIFIA(ティフィア)ローンっていうやつです。TIFIAっていうのは「Transportation Infrastructure Finance and Innovation Act」というやつでして、交通インフラ資金改善条例みたいな感じでしょうか。

そのようなのをてっぺんにして、下のセクション129ローン(Section 129 Loans)まで現在は5種類の公的援助が用意されております。次へ参ります。

実際の道路ではじゃ、そういう資金援助がどんな配分で使われているか、3つの事例をここで取り上げました。左は大変有名な「シカゴスカイウェイ」というやつです。2005年に99年リースで契約をいたしました。スペインのシントラとオーストラリアのマッコーリーが契約者です。ここでは、シントラが27%、マッコーリーが22%、そして銀行ローン52%で、公的援助は使われておりません。それが一番右のIH635というのになりますと、2010年の契約ですけれども、これもシントラとメリディアムっていうところのコンセッショネアですが、株式が26%、そして前のページでご説明しましたTIFIAローンとか、PABs、Private active Bondというやつですね。及びその他の公的資金で74%が公的な援助で賄われております。このように最初は100%民間のリスクでやれと言って始まったPPP事業も数年でもって、やっぱり公的援助がいるよねと、そういうふうにアメリカでは変わってきております。もう一つの変化、公的援助だけでも駄目だな。それがこれからお話をするアベイラビリティ・ペイメントです。ちょっとそうですね。飛ばしまして、24ページまでお願いします。一旦先へ参ります。

これです。実は米国のPPP事業と言うのは大いに破綻しております。1999年に小さな道路、カミノ・リアルっていう小さな道路がPPP事業で、というよりコンセッションで行われました。そこから2016年に至る間に、このカミノ・リアルそのものを含めて5件の事業破綻が出てきております。それを示したのがこの表なんですね。例えば、SR125というのはココにあるんですけれども、6年で破綻しております。それからその下のシカゴスカイウェイ。これも9年で破綻をしています。その下のインディアナトールロードは7年、SH130は7年。大体数年でこういった民間リスクの高い事業、すなわち交通の需要予測のリスクが民間にかかっている、そういった道路事業が破綻をしてまいりました。で、元へ戻ります。16ページ。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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