【寄稿】洋上風力発電に関する近時の動向及び法改正について

2020.03.06 ナレッジ

ナレッジパートナー:越元 瑞樹


3. 一般海域における洋上風力発電の動向

(1) 促進区域の指定及び公募占用指針に関する意見(案)等の公表
2019年7月30日付で、経済産業省資源エネルギー庁及び国土交通省港湾局は、促進区域の指定に向けて、既に一定の準備段階に進んでいる区域として、11区域(6区域は有望な区域)を発表した。このうち4区域については、協議会の組織や国による風況・地質調査の準備を直ちに開始することとした。 直ちに調査等を開始する有望な区域としては、①秋田県能代市、②三種町および男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖(北側・南側)、③千葉県銚子市沖及び④長崎県五島市沖である。 秋田及び青森などの日本海側などの特に風況の良い場所に促進地域が集まった状況にあるといえる。

(出典:調達価格等算定委員会2020年2月4日付資料「再エネ海域利用法に基づく公募占用指針について」P5)

このうち2019年12月6日、長崎県五島市沖について、再エネ海域利用法第8条3項に基づき、促進区域の指定の案の公告及び縦覧に供され、2019年12月27日、長崎県五島市沖が、再エネ海域利用法第8条1項に基づき、促進区域として指定され、同条6項に基づき、公告された。 さらに、2020年2月4日に、調達価格等算定委員会により、長崎県五島市沖に係る再エネ海域利用法に基づく公募占用指針に関する意見(案)等が公表され、再エネ海域利用法第13条第2項第1号、及び第4号から第10号までに係る事項、すなわち発電設備の出力の量の基準や供給価格上限額等に関する事項について検討内容及び意見が示されている。再エネ海域利用法に基づく公募占用指針に関する意見(案)においては、①対象発電設備区分等(再エネ海域利用法第13条第2項第1号)については、浮体式、②出力の量の基準(同項第4号)については、最大受電電力は2.1万kWとしつつ、上限を設定せず、下限を1.68万kW、③供給価格上限額(同項7号)については、36円/kWh、④調達期間(同項9号)を20年間とし、選定の日から8年を上限に事業開始日を定めることとし、これを超過した場合は調達期間を短縮すること、その他公募の参加者に関する基準や保証金に関する事項等が意見として示されている。

(2) 促進区域の指定に関する情報提供
促進区域指定ガイドラインにおいては、促進区域指定プロセスは年度ごとに実施されるとされているところ、令和2年度(2020年度)に向けたプロセスとして、 2019年12月13日付で都道府県に対して、また洋上風力発電事業を計画している事業者に対しては2020年1月21日付で、促進区域の指定に関する情報提供の受付もなされた。事業者から提供された情報は、原則非公表のものとして取り扱われ、提供対象の情報としては、「基礎情報」「系統関連」「調査関連」「基地港湾」「地域関連」の5項目の情報を、指定の情報事業者情報提供フォーマットに記載して提出する方法が採られた。

(3) 洋上風力発電に関する基準類の改定
洋上風力発電プロジェクトの円滑化を図るため、港湾区域における洋上風力発電事業に係る基準類 が既に策定及び公表されているが、再エネ海域利用法に基づく一般海域についての占用制度の導入に伴い、一般海域における洋上風力発電事業に係る基準類の検討が現在進められているところである。今後、基準類の改定に関する審議が行われる予定であり、一般海域の洋上風力発電事業にも適用可能となる基準類の改定版が2020年度中に策定及び公表される予定となっている。

4. 最後に

日本政府は、2030年度までに運転が開始されている促進区域を5区域とすることをKPI(Key Performance Indicator(重要業績評価指標))として、促進区域を指定していくとしている。よって、促進区域5区域における2030年度までの運転開始が日本政府の重要施策の一つとして一定の成果を上げられたか否かの指標となってくることとなり、当該目標の達成を目指して洋上風力発電事業が推進されていくこととなる 。日本国内における大型の洋上風力発電事業は、今後一般海域における公募に基づき進めることが主流になってくるものと思われるが、かかる洋上風力発電事業は、公募占用指針に従って公募占用計画の提出を行ったうえで、事業を進める必要がある。現状、公募占用計画の提出に関する詳細は、公募運用指針からは明らかではない部分も多い。そのため、過去の港湾法上の公募手続を参考とするほか、今後長崎県五島市沖につき、公募占用指針の策定・公示が一番早く進むと思われることから、その内容が参考になると思われ、その内容については注目されるところとなると思われる。

以上

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