【寄稿】洋上風力発電に関する近時の動向及び法改正について

2020.03.06 ナレッジ

ナレッジパートナー:越元 瑞樹


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TMI総合法律事務所
弁護士 越元瑞樹

1. 洋上風力発電事業の近時の動向

2015年のパリ協定をきっかけとして、現在でも世界的に太陽光・風力発電を中心とする再生可能エネルギーへの転換が進んでおり、2018年の世界の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は26%と4分の1を超える割合となっている。[*1]

(出典:資源エネルギー庁2019年9月付資料「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」P4)

日本政府も、現在再生可能エネルギーについて主力電源として位置付け、一定の導入策を図っている。その中でも洋上風力については、陸上風力の適地が限定的であることから、洋上風力発電の導入は不可欠であり、洋上風力発電の導入促進策を講じていくとされ(2018年7月3日に閣議決定された第5次エネルギー基本計画参照)、2030年には1,000万kWの導入が予定されているところである。

現在日本において、洋上風力発電事業が実際に行われ、また行われることが実際に計画されている海域としては、主として「港湾区域」(港湾法第2条第3項・同条第6項参照)と「一般海域」に分けられる。 「港湾区域」については、2016年7月に施行された改正港湾法に基づき導入された占用公募制度(港湾法第37条の3)に基づき、公募を通じて洋上風力発電の実施計画が認定されることとなった。

一方、一般海域については、2019年4月1日に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(以下「再エネ海域利用法」という。)が施行されることにより、長期占用を行うための統一的ルールが整備され、現在各地で一般海域における洋上風力発電が着々と計画が進んでいるところである。

(出典:調達価格等算定委員会2020年2月4日付資料「(資料1)令和2年度の調達価格等に関する意見(案)」P49)

洋上風力発電に関する近時の主な動きをまとめると、以下の時系列のとおりである 。[*2]

2019年2月8日 一般海域について都道府県からの促進区域の指定に向けた有望な区域等の情報提供の受付の開始(第一回)

2019年4月1日 再エネ海域利用法の施行による一般海域における占用公募制度の導入

2019年5月17日 再エネ海域利用法に係る基本方針[*3] の閣議決定

2019年6月11日 指定ガイドライン[*4] 及び公募運用指針[*5] の公表

2019年7月30日 促進区域の指定に向けた有望な区域(11区域)の発表

2019年11月29日 改正港湾法(2019年改正港湾法)の一部施行により港湾区域内の認定期間が30年に

2019年12月6日 長崎県五島市沖について、促進区域の指定の案の広告及び縦覧

2019年12月13日 都道府県からの促進区域の指定に向けた有望な区域等の情報提供の受付の開始(第二回)

2019年12月27日 長崎県五島市沖が再エネ海域利用法に基づき促進区域として指定

2020年1月21日 事業者からの促進区域の指定に向けた有望な区域等の情報提供の受付の開始(2020年2月14日締切)

2020年2月3日 秋田港及び能代工で日本国内初となる商用ベースでの大型洋上風力発電事業の実施発表

2020年2月4日 調達価格等算定委員会長崎県五島市沖に係る再エネ海域利用法に基づく公募占用指針に関する意見(案)等の公表

2020年2月14日 2019年改正港湾法の全面施行による基地港湾制度の導入

 

[*1]出典:REN21「Renewables 2019 Global Status Report」

[*2]本稿は2020年2月26日現在の情報に基づくものである。

[*3]海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針

[*4]海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域指定ガイドライン

[*5]一般海域における占用公募制度の運用指針

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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