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【レポート】(全6回)輸出信用機関(ECA)とプロジェクトファイナンスー第4回

2017.07.20 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


3-1-2 民間銀行の優先償還

 日本の輸出金融(バイヤーズ・クレジット)は上記の通り、国際協力銀行、日本貿易保険、民間銀行の3者で協働して組成する。国際協力銀行と民間銀行が融資を行い、日本貿易保険は民間銀行の融資に保険を付与する。ところで、本事例のように火力発電所向けの輸出金融は返済期間が最長12年である。融資期間は火力発電所を建設する期間を含むので、仮に建設期間を3年とすると15年(3年+12年)である。

 そこで民間銀行の視点で問題となるのは、この融資期間の長さである。民間銀行の視点では融資期間15年は長い。ましてや借主が新興国の国営電力会社となると、融資期間が長くなることによる信用リスクの増大は看過できない。つまり、民間銀行としては本事例のような融資案件に対して、融資期間が長いために融資への参加に二の足を踏む。このような民間銀行の懸念に対応するために存在するのが、民間銀行の融資の「優先償還」である。

 日本の輸出金融(バイヤーズ・クレジット)では通常融資金額のうち60%を国際協力銀行が直接融資を行い、残り40%を民間銀行が融資を行うが、返済方法については国際協力銀行の融資返済と民間銀行の融資返済は原則プロラタである。国際協力銀行の融資返済と民間銀行の融資返済をプロラタで行うとは、返済期間12年間を通じて常に返済元金を60対40の割合で両者に配分するということである。両者への融資返済をプロラタで行うことにより、両者の融資は共に最終返済日に同時に完済される(本事例ではいずれも返済開始から12年後)。つまり、プロラタで融資返済をする限り、民間銀行の返済期間は国際協力銀行のそれと同一になり、民間銀行の返済期間を短縮することはできない。

 民間銀行の融資の返済期間を短縮させるのが優先償還である。優先償還を適用すると、借主からの融資返済金を当初すべて民間銀行の融資返済に充当する。民間銀行の融資が完済するまで、これを続ける。民間銀行の融資が完済してはじめて、以後借主からの融資返済金を国際協力銀行の融資返済に充当する。借主からの融資返済金が民間銀行の融資返済に充当されている間は、国際協力銀行は貸出金の利息金だけの受領にとどめ、元金の返済は一切受けない。

 この優先償還を適用することによって、民間銀行の返済期間はどのくらい短縮されるのであろうか。本事例の場合、民間銀行の返済期間は12年から4.8年に短縮される。民間銀行の融資割合が40%なので、12年に40%を掛けて算出することができる。民間銀行の返済期間は4.8年まで短縮されるものの、建設期間中は国際協力銀行の融資実行と民間銀行の融資実行とはプロラタで行われる。従って、民間銀行の融資期間は建設期間と短縮された返済期間との合算になる。建設期間を3年とすると、民間銀行の融資期間は7.8年(3年+4.8年)になる。優先償還を適用しなかった場合の民間銀行の融資期間は15年だったので、これが優先償還の適用によっておおよそ半減したことになる。融資期間短縮あるいは返済期間短縮の効果は大きい。

民間銀行の優先償還を適用するには、国際協力銀行と日本貿易保険の承認が必要である。民間銀行の優先償還によって、国際協力銀行の融資の平均ローン・ライフ[*22]は伸びる。民間銀行が優先償還によって得る返済期間短縮の利益は、国際協力銀行の融資の平均ローン・ライフの延伸[*23]という不利益によって得られたものということになる。従って、国際協力銀行の承認は必須である。通常民間銀行が当該案件の15年等の長期に亘る融資が困難であるなどの理由を疎明して優先償還の適用を要請し、これに両輸出信用機関が承認を下すのが普通である。

[*22]  融資の平均ローン・ライフは英語ではaveraged loan lifeという。融資の平均ローン・ライフ(averaged loan life)はいわば融資の平均寿命を示すもので、例えば、融資が元金均等返済の場合、返済期間12年の融資の平均ローン・ライフは6年である。
[*23] 具体的に民間銀行の優先償還によって国際協力銀行の融資の平均ローン・ライフはどのくらい延伸するのであろうか。元金均等返済を前提とし、返済期間12年の部分に限って試算すると、平均ローン・ライフ6年が8.4年 [4.8+(12-4.8)/2] まで延伸する。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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