【寄稿】再エネ施行規則の改正省令の公布(1)

2020.12.28 ナレッジ

ナレッジパートナー:越元 瑞樹


TMI総合法律事務所
弁護士 越元瑞樹

1. 再エネ特措法施行規則の一部を改正する省令の公布について(1

強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(以下「エネルギー強靭化法」という。)が2020年6月5日付で参議院において可決され、成立した。同法は、旧再エネ特措法の改正を含み、施行時期は2022年4月1日とされている。

エネルギー強靭化法の成立に伴い、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(旧再エネ特措法)は、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」(以下「再エネ促進法」という。)という名称に改正される。 再エネ促進法においては、FIT認定案件のうち長期運転開始されていない案件については、失効期限を設けてそれを超えて運転開始できない場合には、FIT認定を失効させる制度(以下「本失効制度」という。)が新設された。本失効制度において、失効事由については、「第9条第4項の認定を受けた日から起算して再生可能エネルギー発電設備の区分等ごとに経済産業省令で定める期間内に認定計画に係る再生可能エネルギー発電事業を開始しなかったとき。」(再エネ促進法第14条第2号)とだけ規定されており、失効事由の詳細は省令に委ねられている。

本失効制度の省令である電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和2年経済産業省令第85号)(以下「本省令」といい、本省令による改正後の施行規則を「改正本施行規則」という。)が2020年12月1日付で公布された。

2. 本失効制度の基本的な設計

運転開始期限の1年後の時点(再エネ促進法施行時点(2022年4月1日)で既に運転開始期限を経過している案件については再エネ促進法施行日の1年後の時点)の案件の進捗状況に応じてよって、異なる認定失効期間が設定されている(経産省8月31日資料P8・本省令案概要P1からP6)。

具体的な失効期間等は対象となる再生可能エネルギー発電設備の区分に応じて異なっているが、事業用太陽光発電設備については以下の条件で失効することとされている。

(1)2022年4月1日時点で運転開始期限日を経過している太陽光発電案件(改正本施行規則附則第2条第1項)

①原則
(i)2023年3月31日までに、系統連系工事着工申込書が受領されていない場合
失効期限:2023年3月31日

(ii)2023年3月31日までに、系統連系工事着工申込書が受領されている場合
失効期限:2025年3月31日

(iii)2MW以上の太陽光発電案件で、2023年3月31日までに、系統連系工事着工申込書が受領され、かつ(1)電気事業法に基づく工事計画届出が不備なく受領され、又は(2)電気事業法第46条の14の規定に基づく準備書に対する経済産業大臣の勧告若しくは勧告をする必要のないこと若しくは勧告までの期間延長の通知がなされたことを経済産業大臣が確認した場合
失効期限:2042年3月31日

②例外(改正本施行規則附則第2条第2項)
みなし認定事業者であって、かつ、2016年7月31日以前に接続契約が締結された太陽光発電案件において、2021年4月1日から2023年3月31日までの間に系統連系工事着工申込書が受領された場合の失効期限は以下の通りとなる。
失効期限:系統連系工事着工申込書が受領された日+4年

但し、2MW以上の案件において、2021年4月1日から2023年3月31日までの間に系統連系工事着工申込書の提出がなされ、かつ(1)電気事業法に基づく工事計画届出が不備なく受領され、又は(2)電気事業法第46条の14の規定に基づく準備書に対する経済産業大臣の勧告若しくは勧告をする必要のないこと若しくは勧告までの期間延長の通知がなされたことを経済産業大臣が確認した場合
失効期限:系統連系工事着工申込書が受領された日+21年

(2)再エネ促進法施行日において、運転開始期限が到来していない太陽光発電案件(改正本施行規則第13条の2第1項第1号)

①認定日から4年(認定申請の際現に環境影響評価法に基づく環境アセスメント(以下「法アセス」という。)を行っている場合には6年)後の日までに系統連系工事着工申込書が受領されていない場合
失効期限:認定を受けた日から起算して4年(認定申請の際現に法アセスを行っている案件については、6年)

②認定日から4年(認定申請の際現に法アセスを行っている場合には6年)後の日までに系統連系工事着工申込書が受領されている場合
失効期限:認定を受けた日から起算して6年(認定申請の際現に法アセスを行っている案件については、8年)

③2MW以上の案件において、認定日から4年後の日までに系統連系工事着工申込書が受領され、かつ、開発工事への準備・着手が公的手続きによって確認された場合
失効期限:認定を受けた日から起算して23年(認定申請の際現に法アセスを行っている案件については、25年)

(3)系統側の都合で連系開始日が遅れた場合の対応 上記(1)(2)のいずれの場合についても、系統連系工事着工申込書が受領された後、系統連系工事の事情によって接続予定日が遅延した場合には、当該遅延した期間を失効期限に追加することとされている(改正本施行規則第13条の2第3項)。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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