【コラム】(プロファイバンカーの視座)第31回 PF組成しやすい事業(17)「資源型」と「電力型」の比較

2019.07.11 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


プロジェクトファイナンスの案件は「資源型」事業と「電力型」事業とに大きく分かれる。そして、両事業はDSCRの水準や金利固定化の要否で違いがある。さて、両事業の間にはこの他にもなんらかの違いが見られるのであろうか。

やはり、両事業のモデルは本質的に異なるので、他にも相違点は当然見られる。例えば、借入金の金利水準である。前回少々言及した通り、借入金の金利水準はLIBORにマージンを加算したものである。つまり、「借入金の金利水準 = LIBOR + マージン」となる。LIBORの水準は市場で決まるので、案件ごとに異なるのはマージンの水準である。借入金の金利水準が異なるというのは、具体的にはマージンの水準が異なるという意味である。

借入金のマージン水準は、そのときどきの金融市場の環境によっても影響を受ける。現在のように金融市場が緩和しているときはマージンの水準はおしなべて低くなりがちである。金融が緩和しているということは資金が市場に潤沢にあるということだから、市場では概ね資金の提供者が資金の需要者より多い。そうすると、資金の需給関係からマージンは低下余儀なくされる。金融市場の環境がマージンの水準を押し上げたり押し下げたりするので、マージンの水準を具体的な数字で示すのは憚られる。後刻市場環境が変わった後に振り返ってみたときに、大いに誤解を招きかねないからである。しかし、数字で議論しないと分かりにくいというのもまた真実である。そこで敢えて後刻の誤解を恐れずに数字を以って説明を続けたいと思う。下記に示すマージンの数字は説明を分かり易くするために敢えて記載を試みているという点、予めご理解頂きたい。

「電力型」事業向けのプロジェクトファイナンス案件のマージンの水準は、現行おおよそ150bpから250bp(注1)程度であろうか。これもプロジェクトの所在国や業種あるいはオフテイカーの信用力等によってかなり幅がある。さらに昨今の緩和した金融市場の中で金融機関の間の競争も激化し、マージンが150bpを下回る例も散見される。マージンが150bpを下回るというのは、プロジェクトファイナンスレンダーとしては非常にきつい。長い時間手間暇を掛けてデュー・ディリジャンス(due diligence)を行い、さらに長期に亘って事業リスク(の一部)を取っているのに、かように低いマージンというのでは少なからず徒労感が漂う。一方、「資源型」事業向けプロジェクトファイナンス案件ではマージンが200bpを下回るという例は珍しい。通常250bpから300bp以上が水準のようである。

マージンの議論をする際には融資の期間にも配慮するのが適切である。というのは、いわゆるイールドカーブ(注2)に見られるように、通常融資の期間が長くなればなるほどマージンも高くなる。具体的には、同一の事業であっても、通常10年の融資のマージンは5年の融資のマージンより高くなる。

プロジェクトファイナンスの融資の期間という点に着目すると、「電力型」事業の融資期間は通常長い。15年から20年は普通であろう。昨今は20年を超えるものも少なくない。これは「電力型」事業には長期のオフテイク契約が存在するからである。長期のオフテイク契約が存在する限りは安定的な事業収入が期待できるので、融資の期間が長くなっても返済は問題なかろうと判断される。事業主(借主)も融資期間を長くできれば、配当金を早めに受領でき出資金に対する事業利回りを引き上げることができる。時間の要素を考慮した現在価値(Present Value)の考え方では、同額の配当金なら受領するタイミングが早ければ早いほど現在価値は上がる。一方、「資源型」事業の融資期間は「電力型」事業ほど長くはない。LNG事業向けプロジェクトファイナンスでは融資期間16年前後といった例が多く見られる。もっとも、融資期間16年というのは「資源型」事業の中では長い方である。「資源型」事業で融資期間20年を超えるものは寡聞にして聞いたことがない。「資源型」事業の原型ともいわれる「リザーブ・ベース・レンディング」(石油・ガスの埋蔵量を担保としたファイナンス)では、融資期間は7年程度が大勢である。

さて、先に「電力型」事業と「資源型」事業のおおよそのマージンの水準を数字で示した。マージンは「資源型」事業の方が「電力型」事業よりも高い。一方、融資期間に注目してみると「電力型」事業の方が「資源型」事業よりも長い。そもそも融資期間は長くなればなるほどマージンは高くなるのが普通であるとも指摘した。つまり、マージンは「資源型」事業の方が「電力型」事業より高い一方で、「資源型」事業は「電力型」事業よりも融資期間が短い。そうすると、融資期間も加味したうえでの両事業のマージンの実質的な差異は、本稿で例示した数字よりもさらに大きいと考えられる。(この稿続く)

注1)bpはbasis pointの略。100bpは1.00%(100bp=1.00%)。従って、150bp=1.50%で250bp=2.50%になる。

注2)イールドカーブ(Yield Curve) とは、縦軸を金利、横軸を期間としてプロットして描かれる、金利と期間の関係を表す「金利曲線(利回り曲線)」のことである。通常この曲線は右上がりになる。

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Photo by Carl Solder on Unsplash 

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)

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