【レポート】カナダにおけるPPPマーケットの概況について

2018.01.16 ナレッジ

ナレッジパートナー:片桐 亮


Ⅱ. カナダのP3マーケットの変遷

 カナダのP3マーケットは、1990年代より事業化が進み、1993年には、民間のP3推進組織であるCCPPP(The Canadian Council for Public Private Partnerships)が設立されている。しかし、1997年にオンタリオ州において事業化された有料高速道路であるHighway 407ETRプロジェクト(新設後に長期にわたるコンセッションとした案件)が、利用料金設定に係る民間への無制限の権限移譲等に伴う係争に発展し、カナダ国内においてのP3事業化の機運が減衰した。上記の影響もあり、オンタリオ州では、PPP/PFIプロジェクトのことをカナダで一般的な“P3”ではなく“AFP(Alternative Financing and Procurement)”と呼称しているが、これは、Highway 407ETRにおける苦い経験から、現在のプロジェクトが、Highway 407ETRプロジェクトとは別の概念によることを強調したためである。

 その後、2000年に、ブリティッシュ・コロンビア州において設立された州政府のP3推進組織である“Partnerships British Columbia”により、バンクーバー五輪に向けた空港から中心市街地までのLRT(Light rail transit)整備プロジェクトなど、いくつかのP3プロジェクトが成功すると、2003年にはオンタリオ州にP3推進組織である“Infrastructure Ontario”が設立され、オンタリオ州内におけるP3プロジェクトが急激に増加した。現在、カナダにおけるP3プロジェクトの約半数は、オンタリオ州によるものとなっている。

 2009年には、カナダ連邦政府のP3推進組織である“P3 Canada”が設立され、P3推進に係る国による補助プログラムの導入が進められている。

【図表1 カナダにおけるP3事業化件数の推移】

(出典:CCPPP P3 Spectrumよりデロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成。
2017年10月末までのファイナンシャルクローズ済みの案件のみを抽出)

 

【図表2 カナダにおける州別のP3事業化件数の割合】

(出典:CCPPP P3 Spectrumよりデロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成。
2017年10月末までのファイナンシャルクローズ済みの案件のみを抽出。但し、複数州にまたがるプロジェクトは除く)

次ページへ P3マーケットのセクター、スキームの特徴

1 2 3 4 5 6

, , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , ,


デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

月別アーカイブ