【レポート】カナダにおけるPPPマーケットの概況について

2018.01.16 ナレッジ

ナレッジパートナー:片桐 亮


Ⅲ. P3マーケットのセクター、スキームの特徴

 カナダは連邦制をとる国家であり、行政組織としては、大きく連邦政府(Federal)、州・準州(Provincial)および自治体(Municipal)の3つに分かれる。うち、公共インフラを多く運営するのは、州レベルの組織であり、病院や教育施設、刑務所やエネルギー関連施設、道路等多岐にわたる。自治体が運営する公共インフラは上下水道やLRTといったインフラとなっている。

 これまでカナダのP3マーケットを牽引してきたのは、病院、交通のセクターであった。病院については、老朽化した施設のリニューアルの案件が多く、民間事業者の事業範囲としては、施設の改修と維持管理・改修、一部の案件においてITシステム導入といったハード面のみに留まるケースが一般的であり、医療行為や薬剤・診療材料の購入といった業務が含まれない。

 交通セクターについては、過去には道路や橋梁・トンネル等の案件が多かったものの、近年、オンタリオ州の人口増加に伴うスプロール化の影響により、郊外でのLRT整備ニーズが高まっており、今後のパイプラインを含め、急激なP3の事業化検討が進んでいる。

【図表3 セクター別に見たP3プロジェクトの状況】

(出典:CCPPP P3 Spectrumよりデロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成。
ファイナンシャルクローズ前のプロジェクトも含む)

 カナダにおいて導入されているP3スキームは、概ね以下の4つに分類され(図表4参照)、運営・維持管理を含まないスキームも導入されている。ただし、連邦政府では、以下のスキームのうち、P3においてはDBFMOまたはDBFMを活用することが推奨されており、連邦政府のP3補助制度である“P3 Fund”を活用するためには、DBFMOまたはDBFMのいずれかの手法を活用することが条件となっている。

 また、カナダでは、有料道路やLRT、上下水道といった利用料金徴収型の公共インフラであっても、公共側が全額サービスフィーを支払う“アベイラビリティ・ペイメント型”である点に特徴がある。これは、前述のとおり初期のP3事例であるHighway 407ETRにおける苦い経験が大きく影響している。

 サービスフィーの支払いにおいても、施設整備費用の半分以上(50%-75%程度)が完工時までに支払われるケースが大半であり、ファイナンスニーズは比較的小さい点にも特徴がある。

【図表4 カナダにおける主なP3スキーム】

(出典:各種資料等よりデロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成。)

 

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