2024.03.29
【レポート】カナダにおけるPPPマーケットの概況について
2018.01.16 ナレッジ
Ⅳ. カナダにおけるP3参入プレーヤーの特徴
マーケットの初期段階においては、エクイティプレーヤーとして、グローバルなインフラファンドの参画が進んでいたが、現状では、カナダ大手のEPC企業の存在感が非常に高まっている。また、英国やスペインといったPPP先進国および米国におけるEPC企業による参画も進んでいる。前述のとおり、カナダのP3マーケットは“アベイラビリティ・ペイメント型”の案件が中心となること、完工時までの支払いが大部分を占めることなどから、事業リスクが比較的小さいため、EPCを中心とした事業者の参画に適したマーケットとなっていることが要因と考えられる。大規模な事業であっても資金調達ニーズが小さいため、年金基金等の機関投資家による参画はほとんど見られないが、一部、プロジェクトマネジメントを行うアクティブなインフラファンドによる参画もある。
エクイティプレーヤーに対しては、一般的に完工後一定期間(1-2年程度)の保有制限が課されるが、その後の売買については、公共の承諾があれば概ね自由に取引が可能である。ただし近年、エクイティの売買といったいわゆるセカンダリー・マーケット関連取引が増加したこともあり、英国等の取組みを参考に、オンタリオ州では一部案件にて、第三者に対する株式の譲渡益についてプロフィットシェア条項が課されている模様である。
30年超の長期事業となることが一般的であるため、デットプレーヤーは、保険またはデットファンドに限定されており、銀行等のファイナンスは建設期間中のみの参画に留まることが一般的である。金融危機後においても、一定のボリュームでボンド調達を継続し続けてきた点に特徴があり、格付けは概ねA~BBBクラスとなっている。“アベイラビリティ・ペイメント型“の案件であり、対象事業に固有のリスクは小さいため、アセットクラスによる格付けの違いはなく、概ね発注者サイドのクレジットに影響を受ける傾向にある。
また、“アベイラビリティ・ペイメント型”であり、運営・維持管理期間中のリスクは比較的小さいことから、レバレッジは極めて高くD:E比率はおよそ9:1程度となることが一般的である。
【図表5 一般的な資金調達のイメージ】
(出典:各種関係者へのヒアリングよりデロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成)
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