【コラム】(プロファイバンカーの視座)第3回 ノンリコースローンの出番

2018.05.10 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


 2回に亘ってシェアハウス「かぼちゃの馬車」の話題を採り上げた。最初は、長期に亘る家賃保証という契約内容もこれを保証した運営会社の履行能力も両方とも重要だと指摘した。そして、前回はそうは言うものの、実は契約内容と相手方の履行能力との間にはトレードオフの関係があると指摘した。つまり、契約内容も契約の相手方の履行能力も両方大事ではあるけれど、現実にはこの両者の間にはトレードオフの関係があって、両者とも好条件とするのは現実には容易ではない。

 先日知り合いの方とこの「かぼちゃの馬車」の話題に触れ、果たしてオーナーの人たちは今回の家賃保証不履行のリスクから自分を守る方法はあったのだろうか、という議論に及んだ。知り合いの方は「運営会社が保証した家賃を支払わないのなら、どう仕様もない」と、リスクを遮断することはできなかったのではないかと言う。筆者も最初そう思った。しかし、よく考えてみると、家賃保証不履行のリスクを遮断する方法はあったのではないかと思う。

 それは、法人を設立し(現在株式会社の設立は少額の出資金で比較的容易にできる)、その法人が銀行から借入を行い、シェアハウスとなる不動産も所有する。そして、オーナーの人たちは法人が行う銀行借入金について債務保証を行わない。つまり、法人の借入金はオーナーに対していわゆるノンリコースローンにする。運営会社は法人に対して長期保証した家賃を支払う。銀行はシェアハウスとなる不動産を担保(抵当権)として取得する。そして、銀行の借入金の返済原資は運営会社から支払われる家賃保証の支払金のみとする。

 すべてが計画通りに行っている場合は、借主がオーナー個人であろうと法人であろうと違いはない(税務上の違いはあるが、ここでは税務上の問題は横においておく)。しかし、運営会社による家賃支払い停止というような事態が発生したときには、大きな違いが出る。オーナー個人が借主の場合には、不動産を処分してもなお借入金が残れば、その残債をオーナー個人が最後まで返済する義務がある。ところが、法人が借主の場合には、不動産を処分して残債が残ろうが、法人を清算して終了させることができる。法人設立時にオーナーが拠出した出資金は失うが、株式会社の設立は少額の出資金でも可能なので、その額は大きくない。オーナー個人は法人の借入金に対して債務保証を行っていないので、法人の残債についてオーナー個人に返済の義務はない。

 法人を設立してノンリコースローンにしたら、銀行が融資をしたかどうかは分からない。しかし、この方法で銀行が融資を渋るなら、それは銀行が運営会社の長期家賃保証を信用していない証左といえるかもしれない。法人を借主としたノンリコースローンならこの事業に参画するが、個人を借主としたリコースローンでなければ銀行が融資をしないというなら、この事業に参画しない。そういう判断もあったかもしれない。

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Photo by David Alacaraz on Unsplash 

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