【コラム】(プロファイバンカーの視座)第11回 新興国のパートナー(1)

2018.09.13 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


海外事業を行う際、パートナーを募ることはよくある。ここでいうパートナーとは共同出資者のことである。プロジェクトファイナンスレンダーは出資者のことをスポンサーとも呼ぶ。従って、パートナーもスポンサーも出資者という意味では同じである。

海外事業でパートナーを探すのは何のためであろうか。ひとつは事業規模が大きくて出資額も大きくなるため、出資者の数を増やして各人の出資金の負担を分担するという目的が考えられる。また、事業の推進にはさまざまなノウハウやスキルを要するため、各社が持っているノウハウやスキルを持ち寄る目的でパートナーを探すこともある。例えば、商社がメーカーと一緒に出資するケースがこの例であろう。商社は海外の知見を発揮し、物流やファイナンスなどを担当する。メーカーは製造技術などのノウハウを発揮し、操業を担う。

さらに新興国で事業を起こす場合には、その国の地元企業にも出資に参加してもらうことがある。地元企業は自国のことに精通しているので、自国政府や行政機関とのコミュニケーションをはじめ許認可取得などの独自な役割が期待される。例えば、アジアの新興国の多くでは必ずしも英語が思うように通じない。政府や行政機関の職員でも英語が流暢というわけはない(この点、日本のことを棚に上げるのは甚だ失礼かもしれないが)。そうすると、自国語ができる地元企業の活躍の余地は大きい。

さて、新興国で地元企業を共同出資者に招いている場合に、この事業でプロジェクトファイナンスでの借入を予定しているとする。そうすると、プロジェクトファイナンスを組成するうえでどんな問題が発生するであろうか。よく起こる問題は新興国地元企業の財務能力の問題であろう。ここでいう財務能力の問題とは、具体的には「出資金拠出能力」と「完工までの債務保証能力」の問題である。

「出資金拠出能力」とは、文字通り、新興国の地元企業が出資金を拠出することはできるのかということである。出資金の金額は地元企業の出資割合に応じた金額である。おそらく出資割合は大きくはないかもしれない。しかしながら、事業規模が大きいと、たとえ10%程度の出資割合であっても出資金額は小さくない。そこで、新興国の地元企業は拠出できるのであろうかという問題がプロジェクトファイナンスレンダーから提議されやすい。発電所等の建造物やプラントを建設する案件では建設に数年を要する。出資金は建設代金の支払いスケジュールに応じて拠出することが多いので、当初に全額を拠出する必要はない。しかし、建設期間の数年に亘って順次出資金を拠出するがゆえに、足元の財務能力だけではなく、向こう数年の間の財務能力を判断しなければならない。

「完工までの債務保証能力」とは、プロジェクトファイナンスでは建造物が完工し操業を開始するまでスポンサーに債務保証を要請することが少なくないが、この債務保証能力のことである。プロジェクトファイナンスの特長のひとつとして借入金がノンリコースであることが挙げられる。ノンリコースとはスポンサーが債務を負担しないということである。しかし、このノンリコースは通常操業を開始してから始まる。建造物の完工・操業の開始まではスポンサーが債務保証を行うのが普通である(この例外として火力発電所や太陽光の案件が挙げられる)。新興国の地元企業は果たして「完工までの債務保証能力」はあるのかどうか。このときの判断基準は上記の「出資金拠出能力」の判断基準と全く同様である。

新興国の地元企業は「出資金拠出能力」も「完工までの債務保証能力」も不十分ではないかとプロジェクトファイナンスレンダーから指摘されることは少なくない。そういう指摘が出てきたら、どうすれば良いのだろうか。(次回に続く)

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Photo by Florian Wehde on Unsplash  

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