【コラム】(プロファイバンカーの視座)第18回 PF組成しやすい事業(4)「電力型」(水事業)

2018.12.27 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


前々回「事業収入が安定している事業は他にもあるが、長期電力売買契約を持った発電事業が代表的なので、このタイプの事業を筆者は「電力型」と呼んでいる。」と結んだ。前回は米国のマーチャント案件を俎上に上げ、発電事業ではあるけれども事業収入の安定した「電力型」事業ではないとした。今回は発電事業以外で事業収入の安定している事業を観てゆきたい。これらの事業もまた「電力型」の仲間で、プロジェクトファイナンスの組成がしやすい事業である。

まず、発電事業以外で事業収入が安定している事業として挙げられるのが水事業である。具体的には淡水化事業がよく見られる。日本は降水量が多く、水に恵まれている。いまでこそ日本人はペットボトルの水を多く飲むようになってきたが、日本の水道水は他国のものと比べ飲料水として甚だ良質である。海外特に新興国に出張すると、ビジネスホテルの室内にペットボトルの水が置いてあることが多いが、あれは水道水の水が飲料に適さないためである。

さて、中東諸国などでは元来降水量が少なく、他方石油収入等で経済が豊かになり人口が増えてきているため、飲料水の需要が伸びている。そこで海水を淡水化して(塩分を取り除いて)飲料水を造る事業が増えている。電力需要も伸長しているため、発電事業と淡水化事業とを一体化したIWPP(Independent Water and Power Producer)事業が盛んである。日本の企業も随分中東諸国のIWPP事業に参画している。

中東諸国以外でも淡水化事業は散見される。例えば、シンガポールやオーストラリアには大型の淡水化事業がある。シンガポールは隣国のマレーシアから淡水を輸入しているが、その依存度が高いため自国内に淡水化事業を興し淡水の自給率を高めようとしている。オーストラリアはアメリカ合衆国並みに国土が広いが、降水量は多くはない。アメリカは相応の降水量があるので、例えばその中西部は大豆やトウモロコシなどの農産物の産出が多い。しかし、オーストラリアの内陸部は非常に乾燥しており農業に適していない。オーストラリアの人々が沿岸部ばかりに住んでいるのは、内陸部は水が少な過ぎるからである。そして、その沿岸部でさえ人口増加に伴い水が不足しがちである。オーストラリアに淡水化事業が多いのは、こうした事情が背景にある。

水事業(淡水化事業)では水(淡水)の長期供給契約が締結されることによって、事業の収入が安定する。将来の収入見通しも立て易い。そうすると、プロジェクトファイナンスが組成しやすいということになる。長期オフテイク契約の存在する水事業は事業収入が安定しているので、事業の分類としては筆者の言う「電力型」である。「電力型」事業であれば、プロジェクトファイナンスが組成しやすい。

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Photo by Christoph Schulz on Unsplash

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