2024.04.25
【レポート】(全3回)曲がり角に来た米国の道路コンセッション方式 Part.1
2016.04.15 ナレッジ ハブ
多様に発展した欧州から南・北米に普及
ここで、道路事業のコンセッション方式について、簡単に振り返る。元々、道路コンセッション方式の歴史は、欧州のラテン系の国々(フランス、イタリア、スペイン)を中心に、1950~60年代に始まった。国によって事情は異なるが、20世紀後半になって、高速道路整備財源の公共投資から利用者通行料金への転換、フランスやイタリアにおける国営道路会社の民営化、スペインにおける純粋民間インフラ事業開発会社の伸長など、道路コンセッション方式及びコンセッション産業が着実に成長してきた。
世界の有料道路事業に詳しいマドリッド工科大学のホセ・バサロ教授は、コンセッション方式(図表-2)の特徴について次の6点を挙げている。
- 民間事業者がプロジェクトの最終的なデザイン(計画)を設定する。
- 建設費と運営・管理費は、コンセッション(事業運営権)を付与された民間事業者によって賄われる。
- 資産の所有権は公共セクターに属する。
- ほとんどのリスクは民間事業者に移転される。
- 民間事業者は、(公共セクターとの)契約によって合意された期間にわたって、料金徴収する権利と、道路を維持管理・運営する義務を負う。
- 利用者料金を主たる収入源とする。
スペインでは、1960年代後半にコンセッション方式による有料道路事業が始まった当時から、「純粋民間企業」が民間事業者(コンセッション会社)として実績を積んできた。フェロビアル(Ferrovial)グループのシントラ(Cintra)、ACSグループのイリジウム(Iridium)等は、世界的に有力なコンセッション企業に成長している。
欧州の流れをくんだコンセッション方式は、南米・北米市場に浸透している。米国では当初、民間事業者が道路事業に関わることに、議会や一般市民の間で議論があったが、スペインをはじめとする欧州各国の民間事業者が自国での運営・管理ノウハウを持ち込み、様々な資金調達手法を駆使して参入してきたため、コンセッション方式によるプロジェクトが増えている。
次回 : アベイラビリティ・ペイメント方式が増加する米国市場
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