1. 「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(以下「再エネ海域利用法」という。)の施行

洋上風力発電事業等を実施する際の一般海域の占用ルールを定める再エネ海域利用法[*1]は、平成31年4月1日に施行された。具体的には、一般海域につき、再エネ海域利用法を制定し、同区域内の海域における占用計画認定制度・占用許可制度を導入するとともに、関係官公庁やステークホルダー(地元の漁業協同組合等)が参加する協議会を設置し、利害関係の調整を行う仕組みを構築することを目的とする[*2]

政府は、現在再生可能エネルギーについて主力電源として位置付け、その中でも洋上風力については、陸上風力の適地が限定的であることから、洋上風力発電の導入は不可欠であり、洋上風力発電の導入促進策を講じていくとしており(2018年7月3日に閣議決定された第5次エネルギー基本計画参照)、再エネ海域利用法の制定により洋上風力発電導入のさらなる促進が期待されるところである。

[*1] 
再エネ海域利用法の法案は、第197回臨時国会に提出され、2018年11月30日参議院本会議で承認された。なお、第196回通常国会に提出された再エネ海域利用法の法案と再エネ海域利用法の内容はほぼ同様の内容であったが、制定された再エネ海域利用法は、国土交通大臣による事業者に対する洋上風力発電設備の設置及び維持管理に必要な人員及び物資の輸送に利用することができる港湾に関する情報に関する条項(再エネ海域利用法第27条)が追加された。
[*2]
 再エネ海域利用法の法案制定にあたって、参議院国土交通委員会において2018年11月29日付で4項目に関する付帯決議がなされ、(1)漁業権・航路通航権等の重要な権利・環境配慮の点、(2)洋上風力発電設備の環境への影響・自然災害による設備の安全の点、(3)多額のコストを要する洋上風力発電の経営安定対策に関する点、(4)事業者の経営破綻や事業終了後の原状回復に関する将来の撤去費用の確保を当該事業者に対する占用許可の要件とする点が言及されている。

2. これまでの海域利用制度

洋上風力発電事業を行うために占用が必要な海域については、水域を経済的に一体の港湾として管理運営するために必要な最小限度の区域である「港湾区域」(港湾法第2条第3項・同条第6項参照)と領海及び内水のうち港湾区域その他個別法の定めのある区域[*3]以外の区域である「一般海域」に大きく区分される。港湾区域については、2016年7月に施行された改正港湾法に基づき導入された占用公募制度(港湾法第37条の3)に基づき、公募を通じて洋上風力発電の実施計画が認定されている[*4]

(港湾における洋上風力発電の主な導入計画等(平成29年3月現在) 出典:国土交通省)

一方、一般海域については、再エネ海域利用法制定まで長期占用を行うための統一的ルールが整備されていない状況にあり、また各都道府県の条例に基づき占用許可を受けることは可能であったものの、許可を受けることができる期間が通常3~5年と短期間であったため(資源エネルギー庁「立地制約のある電源の導入促進―洋上風力発電の導入の意義と促進策について―」2018年2月22日P11参照)、建中期間及び長期の固定買取制度を前提とした洋上風力発電事業の計画が難しい状況であった。再エネ海域利用法で、一般海域のうちの「促進区域内海域」の占用期間の上限を30年(再エネ海域利用法第10条第7項)と定め、洋上風力発電の事業計画を促進する目的がある。政府は再エネ海域利用法施行前より、同法に基づく促進区域の指定のため、都道府県からの情報提供の受付を行っている(経済産業省・国土交通省「再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定に係る都道府県からの情報提供の受付を開始しました」2019年2月8日)。

前記の通り、既に港湾区域内等における洋上風力発電事業が進行しており、かかる港湾区域内等における洋上風力発電事業の経験を踏まえて今後一般海域における洋上風力発電事業も発展していくと考えられる。

[*3 ]
例えば海岸法及び漁港漁場整備法に基づく区域がある。
[*4]
現在石狩湾新港、青森県むつ小河原港、能代港、秋田港及び北九州港等において、洋上風力発電の導入が計画されて、各地で事業が進められている(2018年12月6日資源エネルギー庁ウェブサイト参照)。

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