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【レポート】プロジェクトファイナンス実務者から見た新興国PPPインフラ事業促進策(小林文彦)

2018.03.24 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:小林 文彦


2. PPPインフラ事業概説

 PPPインフラ事業とは元々政府や地方自治体により建設運営が行われてきた公共インフラを通じての各種サービスを、民間の資金とノウハウを活用して提供する官民協業形態です。伝統的な公共サービスの内容や実施形態は通常法律で規定されている為、PPPインフラ事業を実現するには民間事業者参入を可能にする各種法制度整備を行うことが必要です。さらに民間企業提案型PPPインフラ事業の場合、民間事業者選定に係る公共調達の法制度変更も必要になる場合が多いと言えます。

  PPPインフラ事業を実現する基本原則としてVFM (Value for Money)という言葉が使われます。これはMoney、つまりGovernment transferやUser fees等に対して『Best Value』を提供することを表すものです。PPPインフラ事業のVFMはインフラの建設と運営のそれぞれの分野にあるとされています。建設においては、伝統的な公共事業(Public project)の場合、政治的な配慮などからその必要性に疑問があるようなプロジェクト(所謂White elephant)が建設されることがあります。それがPPPインフラ事業であれば、民間事業者が運営での採算性を考慮してプロジェクトを計画し、詳細スペックについても無駄を省いたライフサイクルコストの低いものを採用すると考えられています。運営においては、これもまた採算性を重視して効率的に実施されるであろうし、公共事業(Public project)において継続的な支出が困難になりやすいメンテナンスについても、必要十分なものが行われるとされています。

 プロジェクト事業会社としては、特定目的会社(Special Purpose Company – SPC)が通常は設立されます。SPCの株主には当該事業に関連する商社・建設会社・運営会社・インフラファンドなどが参画することが多い様です。さらに政府や地方自治体もマイノリティー株主として参加することもあります。ここで付記したいのは、初期の株主の持分が、プロジェクトが建設ステージから運営ステージに入った後に相対またはセカンダリーマーケットを通じて新たな投資家に売却されることもあるということです。これは当然コンセッション契約やプロジェクトファイナンスの契約条件上で許されている範囲での売却となることはいうまでもありません。

  プロジェクトの資金調達にはプロジェクトファイナンスの手法が採用されます。これはSPCが借主となり、SPC自身のキャッシュフローや資産を基に資金を調達するものです。さらに、プロジェクトの様々なリスクが精査されて、保険会社等も含むプロジェクト参加者の中でそれぞれのリスクが分担されます。リスク分担の基本原則は、当該リスクを最も競争力を持ってマネジメントできるパーティーが当該リスクを負担するということです。但し忘れてはならないのは、リスク分担が行われた後でもそれぞれのリスクは存在し続ける為、特にSPCの経営陣や株主、及び融資者は継続的なモニタリングを行う必要があるということです。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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