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【レポート】プロジェクトファイナンス実務者から見た新興国PPPインフラ事業促進策(小林文彦)

2018.03.24 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:小林 文彦


3. ベストプラクティスとしてのIFC

 IFCは世界銀行グループ5社の一つで新興国民間セクター開発に特化した国際機関の中で世界最大です。米国ワシントン DCに本部がありますが、職員総数約3,800人の半数は約100ヶ所のフィールドオフィス(Field office)に配置され、顧客に密接した活動を目指しています。日常業務は利益重視の投資銀行とあまり変わりません。IFCはその設立合意書で投融資に対して政府保証を取ることを禁じられています。つまり、投融資先である新興国民間企業の破綻リスクを負った上で業務を行なっているわけです。しかし、毎年1-2千億円程度の利益を計上しており、いわば利益のでる開発援助を実践していると言えます。投融資で利益を出すということは投融資先が従業員に給与を払い、取引先に必要な支払いをし、その上で利益を出して国に税金を納めているから実現できることです。この様に関係者全員が適切な利益を出すというWin-Winの好循環が持続的な民間セクター開発には必要です。

(IFCのワシントン本部 筆者撮影)

 資金ソース(Funding source)も豊富です。IFCは元々加盟国からの出資金で設立されましたが、主たる資金ソースは利益剰余金とレーティングがAAAのBondです。さらにB loan programの様なシンジケーションプログラム(Syndication program)を使って民間銀行にIFC案件への融資機会を提供しています。また2009年に設立されたIFC Asset Management Companyというファンドを通じて官民の投資家にIFC案件への投資機会を提供しています。これらIFCの主軸のファンディング以外にも案件毎にテーラーメイドのファンディングも組成されています。例えば現地通貨建てのペンションファンド(Pension fund)資産をインフラ投資に回せるようなスキームを組成するようなこともしています。

  IFCの担当官はほとんどがMBAを持つバンカーで、IFCの新興国投融資に関する豊富な知識・経験とWorld Bank Groupの影響力により高度なプロジェクト形成力とリスクマネジメント力を持っています。さらに、プロジェクト事業者に契約遵守と環境規制などの各種コンプライアンスを要求し当該国のビジネススタンダード向上を促進しています。IFC自身のガバナンスやコンプライアンスについても理事会やINT、IEG、AML/CFT、PEP等の規定に準拠した透明性を維持した運営を厳正に行なっています。

  PPPインフラ事業分野では、通常の投融資業務以外にIFC Infraventures という特別なプログラムを持っています。このプログラムは、新興国の様な高リスクマーケットでPPPインフラ事業を開発しようとするデベロッパーが多くはいないという実情の中で、プロジェクト形成段階においてIFCが民間デベロッパーと共同参画してしてプロジェクト開発を行い、ファイナンス・クローズまで実現することを目的としています。具体的には、民間デベロッパーとの共同開発契約(Joint Development Agreement)を基に初期段階の資本(Early stage risk capital)としてプレF/S後のプロジェクト開発資金を分担拠出します。この拠出金はSPC設立時に株式となります。事業が成功すればIFCは後日キャピタルゲイン(Equity capital gain)を得ます。さらにプロジェクト成立時の追加出資やプロジェクトファイナンスのアレンジャーとなる権利を留保することでさらなる収益を得ます。つまり、IFC Infraventuresでも前述の様に利益のでる開発援助を実践しているわけです。この様に、IFCは既にPPPインフラ事業投融資を含む新興国民間セクター開発のグローバルスタンダードを体現していると言えます。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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