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【レポート】プロジェクトファイナンス実務者から見た新興国PPPインフラ事業促進策(小林文彦)

2018.03.24 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:小林 文彦


4. バンカブルなPPPインフラ事業形成

 しかし、そのようなIFCでもストラクチャリングが比較的容易な電力プロジェクト以外には新興国でのバンカブルなPPPインフラ事業形成の成功例が少ないというのが実情です。別の言い方をすれば、資金はあってもその資金を投資できるバンカブルな案件を形成することが十分には実現できていないと言えます。これは冒頭に述べた外務省の有識者懇談会で他有識者も明確に発言していました。要約すれば、「世界的な低金利の中で巨額の資金が投資先を求めている。しかし、先進国も含めて投資対象となりうるPPPインフラプロジェクトが少ないのが実情。よって、資金ソースを探すよりも、バンカブルなインフラプロジェクト形成を支援することが必要。」となります。

(BankableなPPPインフラ事業形成支援 筆者作成)

 それではどうしたら新興国でバンカブルなPPPインフラ事業形成が少しでも容易になるのかです。図のフローチャートはPPPインフラ事業形成の一般的な流れです。PPPはこれまで公共サービスとして行なっていた事業を民間が全部または一部肩代わりする為、PPP法から始まる各種法制度整備を行う必要があります。このPPP法制度は国情やサービスの内容によっては複雑多岐になります。しかし、PPPインフラ事業形成の出発点であるPPP法制度整備が出来ていない国が多いにも拘わらず、フローチャートの第二ステージと第三ステージに於ける民間事業者提案型のPPPインフラ事業支援がJICAなどで数多く行われ、その次のステージにまで進展しない状況が多く見られました。そこで、新しい取り組み方として、法制度整備と政府の能力強化、そして、その次の案件形成について相手国政府に対する支援の必要性が明らかになってきています。これにより真にバンカブルなPPPインフラ事業形成を促進し、企業による実のある事業への参画を支援できると考えます。尚、対民間企業支援の具体的プログラムには、JICAの協力準備調査(PPPインフラ事業)や、経済産業省の「質の高いインフラシステム海外展開促進事業(円借款・民活インフラ案件形成等調査」があります。以上の結果としてPPPインフラ事業案件のバンカビリティが担保されればFinancial Closeステージに於いて民間資金の参画も可能になってくるわけです。

 フローチャートのFinancial Closeステージにある開発援助資金ですが、これは採算性の低いインフラプロジェクトをPPPとして実現する為の方策として考慮されているものです。例えばJICAの場合下記の有償資金協力による「PPPインフラ整備促進に向けた円借款による包括的支援」 が用意されています。

1) VGF (Viability Gap Funding)円借款
2) EBF (Equity Back Finance)円借款
3) PPPインフラ 信用補完スタンド・バイ借款

  さらに、無償資金協力を使ったPPPインフラ事業支援として事業・運営権対応型無償資金協力も用意されています。しかし、Solicited(政府要請型)とUnsolicited(民間提案型)および競争入札と随意契約などの異なった状況下において、透明性(Transparency)を維持しながら関係者のモラルハザードを発生することなくこれらの支援プログラムを実施していけるかが課題となります。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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