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【レポート】プロジェクトファイナンス実務者から見た新興国PPPインフラ事業促進策(小林文彦)

2018.03.24 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:小林 文彦


本稿は国際開発研究者協会ニュースレター2017年6月号への投稿文を大幅に加筆修正したものです。

1. はじめに

 私は2017年4月に外務省国際協力局長主催の「新興国インフラ開発資金に関する有識者懇談会」に有識者としてして招かれました。この有識者懇談会では他有識者のご意見も聴取でき、私の長年にわたるプロジェクトファイナンス実務者としての経験を通じてPPPインフラ事業について考えていたことを再確認することができました。本稿では私がその後に得た知見も含めて、読者の皆さんに新興国PPPインフラ事業促進策についてプロジェクトファイナンス実務者の本音の話に触れて頂こうと思います。

  この有識者懇談会のテーマを引用すると「昨今、アジアを筆頭に世界でインフラ開発需要が急増し、開発資金の供給が追いつかない中、公的資金と民間資金を有機的に組み合わせて資金供給を増やすといった新たな形態のファイナンスのあり方が求められている。新興国といった新たなドナーも出てくる中、今後の開発資金のあり方やインフラファイナンスにおいて国際社会が共有すべきルールなどについて、忌憚のない意見交換を行う。」でした。これは同月に開催された第一回アジア国際経済フォーラムのセッション 1のテーマ「世界中で高まるインフラ需要への対応〜質の高いインフラ投資推進のためのグローバルスタンダードの確立と新たなファイナンス」に呼応するもので、2016年5月伊勢志摩サミットの「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」が基になっていると思われます。

  一方、日本の政府開発援助(Official Development Assistance – ODA)の主たる実施機関であるJICAは新興国PPPインフラ事業支援の様々なプログラムを持っています。皆さんお馴染みの円借款以外に2012年に本格再開した海外投融資事業があります。さらに、無償資金協力を活用する可能性もあります。また、案件形成支援として2010年3月に開始した提案公募型事業である協力準備調査(PPPインフラ事業)があります。そして2017年8月には、より効果的な支援を目指してこの協力準備調査(PPPインフラ事業)が一部改訂されました。

 本稿では、まずPublic Private Partnership (PPP)インフラ事業概説のおさらいをします。そして、私が2004年から2015年までの11年間勤務した国際金融公社(International Finance Corporation – IFC)のPPPインフラ事業ファイナンスを含む新興国に於けるプロジェクトファイナンスの取り組みをベストプラクティスとして紹介します。そして、PPPインフラ事業形成プロセスの各ステージでJICAやIFCなどの国際機関と連携しつつバンカブルなPPPインフラ事業を実現する方策を考察します。そして最後に政府側とPPP事業者側での具体的取り組み方について言及します。

(IFCが民営化プロジェクトに融資をしたタンザニア国鉄 筆者撮影)

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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