【講演録】橋梁のセルフメンテナンス「 ふくしまモデル」の取組み(前編)

2020.03.04 ナレッジ

ナレッジパートナー:株式会社アイ・エス・エス


橋梁の維持管理事情

 この表は建設後50年以上経過する社会資本の割合を示していますが、枠で囲んでいる道路橋に注目いただきたい。2023年から2033年で約25%増加しているんです。高度経済成長期に建設したものがドドっと建設後50年を迎えるので当然ですが、2033年には国内の道路橋のうち、2橋に1橋が築50年だと思うと急に実感がわきます。橋の高齢化が進み、当然、維持管理・更新費も増加するわけですが、2行目以降の河川や下水道、港湾に比べて、道路の予防保全に必要なコストはしばらく増加する一方であるということが分かります。

 道路法上の道路は、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道と分類されて、総延長は約120万km。あまりにも途方もない距離なので何かに例えたくなったのですが・・・安直にブラジルとの直線距離で比較すると、なんと、35往復できました。あ、ここは笑うところです・・・・脱線しましたが、総延長120万km の中でも約 85%は市町村道ですが、道路全体の年間維持管理費の30%程度と距離の割に少ない状況です。表1番上の高速道路と比較すると、キロあたり1/100です。そんな道路の状況を確認したうえで、改めて橋梁に注目しますが・・・平成29年4月時点では橋梁数約69万橋となっていましたが、令和元年8月つい4ヶ月前に発表された最新情報ですと、約72万橋もの橋梁があるということです。

 ご紹介するふくしまモデルの取組みは市町村道の橋梁が主な対象なのですが、市町村が管理する橋梁も道路と同様に、橋梁数に対して適切に維持管理されている割合は少ないといった現状があります。

研究背景

 みなさんご存じのとおり、今からちょうど7年前。笹子トンネル天井版落下事故が発生しました。翌年2013年はメンテナンス元年といわれ、2013、2014年とこれまで作る一方だったインフラに対する考え方の抜本的な見直しがされた年だったと振り返って思います。そして、なんといっても2013年の道路法改正を受けて、2014年7月より道路管理者は5年に1回、近接目視で点検を行うことになりました。ようやく5年に1度の点検が一巡する、今年はそんな節目の年でもありました。今年、2019年2月には、道路橋点検要領が改定され、定期点検に加え、日常な施設の状態把握や、事故・災害等による施設の変状の把握などについては適宜実施するものとする、と明記されています。

 この数年間で橋梁の維持管理について何が大きく変わったかと言いますと、5年に1回の定期点検が必須になったのが1点目。2点目は日常点検を実施することになったこと、3点目は対症療法型の考え方から予防保全型の考え方に移行していること。この3つが特に大きく変わったことではないかと考えられます。それぞれの道路管理者は、これらを踏まえて維持管理に取り組んでいくわけですが、都市部と地方部で同様の維持管理ができるでしょうか?

 都市部の交通量が多い橋梁というのは、予算と技術力をかけた維持管理が可能です。その一方で、地方部の交通量が少ない橋梁というのは、少ない予算と技術力で維持管理を行っていかなければなりません。

 それぞれ全く異なる事情がありますから、同様の維持管理は必ずしも効率的ではないのです。地方の交通量が少ない橋梁に対しては、「住民と連携した橋梁の維持管理システム」を構築しようという考えがふくしまモデルの根幹にあります。

 維持管理と一口に言っても様々で、日常的なパトロールから、点検、緊急対応まであり、この中で住民と協働できる部分は清掃や日常パトロールといった日常点検の部分になります。ふくしまモデルではこの日常点検の一部をサポートする形で住民協働を行っています。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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