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【レポート】(全4回)なぜ交通インフラ事業にプロジェクトファイナンスは難しいのかー第2回

2017.04.11 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


2-2.需要リスク

 次に見てゆくのは、交通インフラ事業の需要リスクである。交通インフラ事業の需要リスクとは、当該交通インフラには一体どのくらいの需要があるのか(ないのか)事前にはなかなか分からないというリスクである。「A都市からB都市をつなぐ鉄道や道路を建設すれば便利になる。かなりの利用者がいるはずだ。」「C川のこの辺りに橋を架ければ、多くの利用者が見込める。」等々の直観的なひらめきは大切ではある。しかし、果たして鉄道や道路や橋を建設した暁に、利用者は予想通り増えるのであろうか。さらに、利用者はどのくらいの料金(鉄道運賃、道路通行料、橋の通行料など)を快く支払ってくれるのであろうか。利用者からの料金徴収をベースとした交通インフラ事業の場合、これは切実な問題である。

 交通インフラ事業の需要リスクを予想するのがいかに難しいか。これを示す実例は枚挙に暇がない。まず、いくつか実例を見ておきたい。一つは海外の例で台湾新幹線、もう一つは日本の例で東京湾アクアライン(以下、「アクアライン」)である。

【台湾新幹線の例】

[*4] 出典:日本経済新聞朝刊 2015.11.05
[*5] 出典:産経ニュース 2015.09.10

【東京湾アクアラインの例】

[*6] 出典:「東京湾アクアラインの交通量について」H25.04.12 千葉県県土整備部道路計画課

 交通インフラ事業者は通常事前に詳細なフィージビリティ・スタディ(Feasibility Study)を行う。フィージビリティ・スタディとは事業性の検証作業である。交通インフラ事業の事業性の検証作業の中で、この需要リスクの検証は非常に重要な部分である。非常に重要であるので、専門のコンサルタントなどを起用し詳細な調査を依頼する。しかしながら、専門のコンサルタントをもってしても、当該交通インフラ事業についてどのくらいの需要(交通量)が見込めるのかを正確に予測するのは難しい。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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