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【レポート】(全4回)なぜ交通インフラ事業にプロジェクトファイナンスは難しいのかー第3回

2017.04.13 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


2-3.土木工事が多い

 交通インフラ事業の3つ目の特性として見てゆくのは土木工事の多さである。
 現在プロジェクトファイナンスの融資対象の事業として最も多いのが発電所の建設・操業の事業(IPP事業という)である。発電所は工業団地のようなすでに整地された敷地に建設されることが多い。整地された用地が整えられているところに、設計図通りの発電プラントを建設する。こういう環境下ではいわゆる完工リスクはほとんど発生しない。プロジェクトファイナンス・レンダーの視点でも、また事業者の視点でも、好ましいことである。

 ここでいう完工リスクとは「完工遅延」のリスクと「コストオーバーラン」のリスクである。「完工遅延」は文字通り完工が遅れることである。数か月程度の完工遅延であればあまり問題ではなかろうと考える向きがあるが、それは問題を過小評価している。特に事業資金として銀行等から借り入れをしていれば、その借入金の利息支払いが遅延している数か月分だけ余計に発生する。借入金額が大きければ、その利息額はばかにならない。しかも、完工をしていないわけであるから操業は開始できず収入は全く無い状況である。完工遅延のため余計に支払わなければならない借入金利息はすべて持ち出しになる。

 「コストオーバーラン」のリスクとは予算超過のリスクのことである。予算超過した金額もすべて持ち出しとなる。完工遅延の場合もコストオーバーランの場合も、追加資金を投じることになる。追加資金を投じるということは総事業費が増加するということであり、事業の収益性は総事業費が増加した分だけ低下する。

 さて、完工リスクが顕在化しやすいのはどういう場合であろうか。この点もプロジェクトファイナンスの世界で相応知見が蓄積している。経験的には、a)土木工事の多い事業、b)製造プロセスの複雑な化学プラント等、c)新興国などでのインフラ不足、d)建設会社(EPC Contractor)の経験・技量不足などが挙げられる。ここで最初に挙げた土木工事の多い事業であるが、これに該当するのが交通インフラ事業である。交通インフラ事業は一般的に土木工事が多い。

 土木工事が多いと、どうして完工リスクが発生しやすいのか。それは土木工事が自然環境を相手にした工事なので、想定外のことが起こりやすいからである。延いては完工遅延やコストオーバーランを引き起こしやすい。たとえば、トンネル工事で予想外の頑強な岩盤に当たることがある。あるいは地下水が予想以上に湧き出しその排出作業に手間取る。あるいは地盤が弱く、その補強工事に過度な費用がかかる。鉄道や道路の工事でも、谷に橋を架け山を削るなど、とにかく土木工事が占める割合が多い。

つまり、交通インフラ事業は土木工事が多いので、完工リスクが大きい。一旦完工リスクが顕在化すると、その金額的なインパクトも小さくなく当該事業の収益性を大幅に悪化させる。

 ちなみに、事業者が直面する完工リスクを軽減するために、建設会社と締結する建設契約で契約金額を固定し、仮に将来建設コストが上昇したとしてもそのコスト上昇分は建設会社が負担するという約定をすることがある。もし、建設契約の金額を固定して完工リスクを建設会社に転嫁することができたとすれば、それは事業者としては幸いである。しかし、現実には土木工事の怖さを誰よりも知っているのは建設会社の方である。従って、法外な契約金額で約定するならいざ知らず、通常大掛かりな土木工事について建設会社が建設契約の金額固定化を易々と応諾することは稀である。従って、完工リスクを建設会社に完全に転嫁するのは難しく、完工リスクは事業者のもとにとどまるのが普通である。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
東京モデリングアソシエイツ
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