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【レポート】(全4回)なぜ交通インフラ事業にプロジェクトファイナンスは難しいのかー第2回

2017.04.11 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


 さて、「利用料金との関係」に話を戻すと、ほとんどのケースで交通インフラ事業を立ち上げる前に当該事業の需要曲線がどうなっているのかが分からないという問題が存在している。周辺住民などにアンケート調査をしてもダメである。そういうアンケート調査をしても、その結果はほとんど当てにならない。なぜなら、利用者にとっても、実際に当該交通インフラ設備が完成して利用してみないことには、通行料金が高いのか安いのか、これからも頻繁に利用するのか今後はあまり利用しないのか、判断しかねるからである。
 これは先に例示したアクアラインの場合が該当する。アクアラインの需要曲線は事前に分からなかったはずである。その証拠にアクアラインでは当初普通車の通行料金を3,000円と想定していた。実際に3,000円を適用して開業した。しかし、利用者が増えず思わしくない。後刻社会実験として800円まで引き下げてみると、相応の利用者増加が見られた。現在でも普通車の通行料金は800円を継続している。800円は3,000円のわずか27%である。

 需要リスクの問題をまとめておきたい。交通インフラ事業では「A都市からB都市をつなぐ鉄道や道路を建設すれば便利になる。かなりの利用者がいるはずだ。」「C川のこの辺りに橋を架ければ、多くの利用者が見込める。」といった着想で、事業化に着手する。ここまでは悪いことではない。人間の着想力や創造力の賜物である。人間はこうやって成長してきた。
 しかし、当該交通インフラ事業に対する需要というのは一体どのくらいあるのか。「時間との関係」で今後の需要の伸長はどうなのか、「利用料金との関係」でどのくらいの通行料でどのくらいの利用者数が見込めるのか。こうやって子細を詰めようとしても、なかなか詰め切れない。交通インフラ事業の需要は事前に正確に把握することができない。これが交通インフラ事業の需要リスクである。
 

次 回  なぜ交通インフラ事業にプロジェクトファイナンスは難しいのか―第3回

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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