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【コラム】(インフラプロジェクト事業開発・運営の現場から)第1回 キャッシュ・フロー・モデル(実践と座学の組み合わせによる実務能力向上)

2019.01.21 連載コラム

ナレッジパートナー:桶本 賢一


『ストラクチャード・ファイナンス EXCELによるキャッシュ・フロー・モデリング』
(キース・A・オールマン:著、桶本賢一、佐伯一郎:訳/ シグマベイスキャピタル)

2018年7月に、シグマベイスキャピタルから「ストラクチャード・ファイナンス Excelによるキャッシュ・フロー・モデリング」という書籍を共訳者として出版する機会を得た。インフラトの書籍案内コーナーにも掲載して頂いたので、書店やAmazon等で実物をご覧頂いた方もおられるかもしれない。ご縁あって、インフラプロジェクトのデベロッパーや事業会社の視点から、今後コラムを執筆させて頂くことになった。初回となる今回は、拙著の内容をご紹介させて頂くとともに、モデルの実務能力習得に向けた方法論(実践と座学の組み合わせ)について記載してみたい。

本書は2007年にアメリカで出版された書籍の翻訳書である。(中国語版に続いて二か国目の出版。英語の原著はKindle版もあるが、中国語版および日本語版は、現時点では紙の書籍のみの発行)。原著のタイトルに「A Step by Step Guide」とある通り、読者は本書に従って第1章の例題(モデル・ビルダー)から順を追ってExcelファイルを作成することによって、最終的に一つのキャッシュ・フロー・モデルを完成させることになる。(Excelファイルは出版社であるシグマベイスキャピタルのWebsiteからダウンロードして使用する)

主な読者ターゲットとしては、

  • キャッシュ・フロー・モデルの全くの初心者
  • 「シート数の多い複雑なモデルを渡されて、自分で試行錯誤した結果、とりあえず担当案件のモデルは動かせる(回せる)ようになったものの、モデルの構成等をもう少し体系的に習得したい」というモデルの初級者

等が想定されている。キャッシュ・フロー・モデルの実務の習得には、「習うより慣れろ」というように、実践が有効なのは間違いないが、基本の習得という点では、座学も有効であると筆者は考えている。本書は、読者が例題を順にこなすことによって、モデルへのインプット→アウトプットという流れを体系的に実体験・習得することが出来るように構成されている。実際の案件における複雑なモデル(実践)を応用問題やスポーツに例えるとすれば、本書の事例(座学)は基本問題や初心者向けの練習・トレーニングに例えることが出来るだろう。(そして残念ながら、基礎練習は、しばしば退屈である)

前半の第2章から第5章で、キャッシュ・フローを生み出すアセットの事例として取り上げているのは、2000年代前半のアメリカにおける住宅ローンのプール債権である。インフラ投資やプロジェクトファイナンスの関係者にとっては、的外れに感じられるかもしれない。この場合、第2章から第5章は読み飛ばして頂いて構わない。

続く第6章および第7章がライアビリティ(資金調達)関連で、インフラ関連のプロジェクトファイナンス案件とも共通点が多い。実際の案件では、例えば

  • シニアローンは複数のトランシェ(例:JBIC部分(投資金融等)と市中銀行部分)
  •  金利スワップに加えてキャップも利用
  •  NEXI等のECA(Export Credit Agency)の保証を利用する場合には、レンダー向け金利とは別に、ECA向け保証料を支払い

等、当然本書の単純化された事例よりも複雑なモデルになる。が、モデル初級者の方にとっては、本書のような単純化された事例(シニアローンと劣後ローンのみで、金利変動リスクヘッジは金利スワップのみ)の方が理解しやすいと思われる。

モデルのアウトプット(第8章)や、インプットを変更した場合の分析(第9章)についても、基本的な考え方はインフラ案件と共通する。インフラ案件の事業開発の現場では、競争力のあるタリフ(電力料金等)と、スポンサーにとって許容可能な採算(例:エクイティIRR(Internal Rate of Return、内部収益率))の両立等を企図して、モデル上で各種条件(インプット)を変更する試算を行うことがあるが、こうした(モデル初級者にとってはある程度)複雑なモデル操作も、モデルのインプットを変更→アプトプットへの影響を試算、という基本動作を座学によって体得しておくと、取り組みやすいだろう。

モデルの実務能力向上に向けた座学としては、本書のような書籍等を利用した独学に加え、時間的・金銭的に余裕があれば、オンライン講座や対面講座を受講するのも一案である。海外志向が強い若手の方(を部下に持つ管理職の方)は、海外でのセミナー・ワークショップへの参加(派遣)を検討してみてはいかがだろうか。例えばEuromoneyが主催している関連コース(URL:https://www.euromoney.com/learning/public-courses)は、相応の受講料がかかるが、有用なケースもあると思われる。実際、筆者も若手の時に(モデルとは別のワークショップであったが)参加する機会を得てモチベーションのアップにつながったし、最近参加した複数の若手の方からも総じて好評であった。但し講師による「当たりはずれ」があるかもしれない点には留意されたい。実践と座学の組み合わせが実務能力の向上に役立つというのは、モデルにも当てはまると言えよう。

以上、今回は拙著のご紹介と、「モデル実務能力の習得・向上には、実践と座学の組み合わせが有効」という、実体験に基づく筆者の考えについて記載させて頂いた。次回以降はインフラプロジェクトのデベロッパー、アセットマネジメントおよび事業会社の視点から、数回にわたってコラムをお届けしたい。

桶本賢一

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
東京モデリングアソシエイツ
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