【コラム】(プロファイバンカーの視座)第26回 PF組成しやすい事業(12)「資源型」の知見・経験

2019.04.25 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


これまで「PF組成しやすい事業」というテーマで連載を続けてきた。過去11回の同テーマの連載のうち、第1回目に「資源型」を採り上げたほかは第2回目から前回第11回目まですべて「電力型」を採り上げてきた。「電力型」の連載が長くなったのは、さまざまな業種の事業が実は「電力型」事業であることを例証するためである。

しかし、さまざまな業種の事業が「電力型」事業であるからと言って、プロジェクトファイナンスは「電力型」事業でないと組成できないのかと理解するのは早計である。なぜなら、資源開発事業つまり「資源型」事業もプロジェクトファイナンスを組成しやすいからである。さらに、プロジェクトファイナンスはそもそも1970年代に資源開発事業向けのファイナンスから誕生した、という史実も再確認しておきたい。プロジェクトファイナンスは資源開発事業向けのファイナンスとして生まれ、後刻電力事業へ利用されるようになったという歴史を持っている。

もっとも、「資源型」事業もプロジェクトファイナンスを組成しやすいとは言っても、「資源型」事業を組成するには「電力型」事業の組成のときとは異なる知見や経験が必要である。「資源型」事業の場合には、埋蔵量を確認する作業や生産物の将来の価格見通しを立てる作業が伴う。

埋蔵量を確認する作業とは一体どういうことをするのであろうか。金融機関にできるのであろうか。こういった疑問を持たれるのは当然である。埋蔵量を実際に確認するのは通常外部の専門家である。その専門家は埋蔵量エンジニア(Reserve Engineer)などと呼ばれる。埋蔵量エンジニアが埋蔵量を査定し、埋蔵量報告書(Reserve Report)を作成してゆく。プロジェクトファイナンスレンダーはこの埋蔵量報告書を受け取り、内容を確認するのである。しかし、普通の金融マンには埋蔵量報告書を読解し評価するのは困難である。「資源型」事業のプロジェクトファイナンスに強い金融機関は、実は組織内に埋蔵量エンジニア(In-house Reserve Engineer)を雇用しているのが普通である。こういった内部の埋蔵量エンジニアが埋蔵量報告書を評価してゆく。

さらに、生産物の将来の価格見通しを立てる作業はどうするのか。これも普通の金融マンには、埋蔵量の確認作業ほどではないにしろ、少々ハードルが高い。しかし、例えば石油・ガスの価格見通しであれば、ある程度知見を持つ金融マンは少なくない。また、組織内に業界を観ているアナリストが在籍していることもある。どうしても必要ならば、外部のコンサルタントに協力を仰ぐこともできる。

「資源型」事業をプロジェクトファイナンスで組成するには、上記の通り「電力型」事業とは異なる知見や経験が必要なので、実は世界で多数の金融機関がプロジェクトファイナンスを供与しているものの、よく見ると「電力型」事業を中心にプロジェクトファイナンスを供与している金融機関が圧倒的に多いということが分かる。「資源型」事業について主導的にプロジェクトファイナンスを組成できる金融機関は実は数が限られている。そして、そういう金融機関のほとんどは欧米諸国の金融機関である。欧米諸国の金融機関はこの分野で一日の長がある。

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明 

*アイキャッチ Photo by Adrien Olichon on Unsplash

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