【寄稿】洋上風力発電事業の今後の展望とファイナンスの検討方法

2019.04.29 ナレッジ

ナレッジパートナー:越元 瑞樹


3. 洋上風力発電の特徴

洋上風力発電は陸上風力発電に比して、広範な領域を確保することができるため、大型の風車を設置することができるという点で利点がある。欧州の北海には、水深50メートル以下の広大な遠浅の海域が広がっており、洋上風力発電に適した立地が豊富であるため、この点を背景に発展を遂げたものと考えられる。一方、日本においては遠浅の海域は限られた範囲にしか存在してないと考えられ、日本においてもこうした海域を確保できるかどうかがキーポイントとなると思われる。

洋上風力発電には、着床式と浮体式があり、着床式は基礎を海底に固定する手法であり、着床式にも重力式、モノパイル式及びジャケット式がある。一方浮体式は洋上風力発電設備を海に浮体物で浮かべて係留する手法であり、浮体式にもスパー型 (spar platform)、TLP 型 (tension leg platform)及びセミサブ型(semi-submersible platform) に分かれる(国土交通省「港湾における洋上風力発電の導入円滑化に向けた技術ガイドライン等検討委員会」2014年1月16日資料P11参照)。

(洋上風力発電施設の構造形式 
出典:国土交通省(第1回 港湾における洋上風力発電の導入円滑化に向けた技術ガイドライン等検討委員会))

いずれにせよ、洋上風力発電設備の設置は、陸上風力発電設備に比して、海底ケーブルの敷設、海上における船を利用した作業、連系工事、風車の海底への据付等、リスクの高い作業を伴うものであり、かつ作業の遅延も多分に予想される事業である。また、実際の商業運転開始後においても、海底ケーブルの損傷等の可能性もあり、当該損傷が生じた場合には、再度洋上での修補作業となるため、維持管理についても陸上風力発電事業に比べてより難易度が高い事業であるといえる。

4. ファイナンスを見据えた事業進行

洋上風力発電設備の建設は上記の通り洋上での作業を要するものであり、プロジェクトコストが比較的多額となることから、資金調達に関する適切なアレンジメントが非常に重要である。一方で、洋上風力発電設備の建設は同時にリスクの高い作業を伴うものであることから、資金投資する者は慎重にリスク分析を行わなければならない。特にノンリコースファイナンス(プロジェクトファイナンス)に基づくファイナンスについては、そのプロジェクトが依然バンカブル(銀行のプロジェクトファイナンスに耐えうる)であるかどうか、徹底的なリスク分析を行う必要がある。また、調達を要する資金は多額となり、レンダー単独での引受は難しく、複数の金融機関によるシンジケートローンによる資金調達となるのが一般的となると考えられる。一方でスポンサー側も、プロジェクトファイナンスによる資金調達を行う場合には、これに備えたリスク分析に多大なコスト及び時間を要することなる。欧州において洋上風力発電事業に対するプロジェクトファイナンスによる資金調達が一般化するのも大分時間を要し、当初はオンバランスのファイナンスが中心とされていたようである(IEA-RETD「Comparative Analysis of International Offshore Wind Energy Development」2017年3月P86参照)。

以下資金調達との関連でプロジェクトにつき検討すべきポイントのいくつかを挙げる。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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