2026.01.24
【寄稿】プロジェクトファイナンスのMyths and Truths 途上国民間投融資促進の為に(後編)
2024.09.05 ナレッジ ハブ
4. まとめ
4-1 プロジェクト・ファイナンスの要点
私が考えるプロジェクト・ファイナンスの要点として、次の6点を列記します。
a) Project specific financing
プロジェクト・ファイナンスの成功には万能薬はありません。個々のプロジェクトはユニークであり、あらゆる使用可能な金融エンジニアリング・ツールを駆使しての組成が必要です。
b) Financial modeling: Foundation of project financing
プロジェクト・ファイナンスを目指す方々には、財務と経理を学ぶ重要性を強調したいです。これらは基本的なビジネス・スキルであり、全てのビジネス・パーソンに習得して頂きたいです。IFCで私が投融資担当官を採用面接した際には、十分な財務と経理の知識と経験、さらにファイナンシャル・モデリング・スキルを持っていることを確認していました。
c) Collateral: Good to have it, but・・・・・
前述3番目の事例でも述べましたが、担保に過大に依存することは危険です。プロジェクト・ファイナンスに於いて担保はSPVのスポンサーや経営者に対するレバレッジ・ツールの一つと見るべきです。
d) Risks and rewards: Most competent party to manage a particular risk takes its reward
当該リスクを最も経済的に管理できるパーティーが、そのリスクを分担し、その適正な対価を得ることが、リスク分配の原則です。
e) Management, Management, Management
不動産の価値を語るときに”Location, Location, Location”というように、その立地の重要性が強調されます。これと同様に、SPVやプロジェクトの成否や運命は、最終的にはその経営者(マネジメント)にかかっています。
f) Close project monitoring
すべての利害関係者によってプロジェクトが仔細にモニタリングされる必要があります。そうすることで、問題にタイムリーな対処を行うことができます。これにより、様々な問題を克服できる可能性があります。
4-2 より良いビジネス環境
ビジネス環境について簡単に触れます。プロジェクト・ファイナンスに携わる者が必要としているのは、下図の一番下にある、全ての契約当事者による”Strict Adherence to Contracts”です。しかし、ビジネス環境の劣悪な国では、契約条件がしばしば無視されます。それは、経営者や政府関係者が、頻繁に公私混同するというGovernanceの欠如に起因することが多いです。そういった問題は、Efficient Legal Systemが不在の為に、契約違反、法律違反、横領等がしばしば罰せられません。それらは、不安定な政府により作り出されている、ネガティブな連鎖の温床によることが多いです。言い換えれば、良いビジネス環境のためにはStable Governmentが不可欠であり、その様な政府が存在しない地域でプロジェクト・ファイナンスを組成するのは非常に困難であり、たとえ組成できたとしても、プロジェクトが破綻するリスクが非常に高いと言わざるを得ません。
(ビジネス環境の連鎖 筆者作成)
4-2 仕事のコツ(Rule of Thumb)
私は、不良債権回収の様なストレスの多い業務を長年こなしてきましたが、そこでたどり着いたのが、ここに列挙する仕事のコツ(Rule of Thumb)です。そして、これらは私の仕事や人生の黄金律でもあります。
a) Accept the situation as it is
・Cannot change the past
b) Get engaged
・Visit the site, meet players
・Understand local conditions: commercial, cultural, environmental, legal, political
c) Maintain good communication
・Follow up actively and tenaciously
・Always seek better ideas from all sources
d) Take ownership
・Think as if it is your money
・Put yourself in your counterpart’s shoes
e) Set realistic targets and deadlines
・Manage expectations
・Use time constraint to your advantage
上記の中から、特にa)とe)について補足します。
a) Accept the situation as it is:どんなに厳しい状況に置かれても、そこから始めざるを得ません。不平を言ったり後悔したりしても何も変わりません。冷徹な事実は、過去を変えることはできないということです。あなたが唯一変えることができるのは未来です。
e) Set realistic targets and deadlines:現実的な目標管理が重要です。そして、上司や周囲のあなたに対する期待度を適切に管理する為にも、敢えて低めの目標値で遅めの達成予定を提示して、それをわずかでも上回る結果を出すことも、プロジェクトや組織全体の目標達成の為に必要となります。そして、最も重要なのは、自分自身への期待度の管理です。実現困難な期待を自身に持つと、一日24時間、間断なく自分自身にストレスをかけることとなり、不安で睡眠が取れず、精神疾患となります。これは私の実体験でもあります。
4-4 参考書籍
プロジェクト・ファイナンスやPPPについてさらに学びたい方の為に参考書籍を一部列挙します。
- 井上義明、2011、『実践プロジェクトファイナンス』、日経BP社。
- 佐々木仁、2018、『海外インフラ投資入門 – PPPの仕組みと本質』、中央経済社。
- Finnerty, John D. 2013. Project Financing: Asset-Based Financial Engineering, Third Edition, John Wiley & Sons, Inc.
- Engel, Eduardo., Fischer, Ronald D., and Galetovic, Alexander. 2014. The Economics of Public-Private Partnerships: A Basic Guide, Cambridge university Press.
以上
*アイキャッチ UnsplashのAnastasia Palagutinaが撮影した写真














