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【寄稿】プロジェクトファイナンスのMyths and Truths 途上国民間投融資促進の為に(前編)

2024.08.29 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:小林 文彦


本稿は「SRIDジャーナル」(ISSN1882-9015SR-027-2024-07 2024731日発行)から許可を得て転載したものです。

はじめに

SRIDは2024年で50周年を迎えます。この50年間の国際協力の世界での最も大きな変化の一つが、先進国から開発途上国への資金の流れがODAから民間資金へ大きくシフトしたことであり、将来もこの趨勢は続くものと考えられます。

2024年の世界銀行・IMF合同Spring Meetingsの期間中に国際金融公社(IFC)のMakhtar Diop長官が投稿した記事(*1)によれば、貧困削減と気候変動対策の為に途上国に対して毎年数兆ドル規模の資金が必要であるとしています。そして、途上国におけるクリーン・エネルギー・プロジェクト向け資金の3分の2が、民間資金であることが必要だとし、その額は今後10年で現在の年間1,350億ドルから、年間1.1兆ドル程度に引き上げられる必要があるとしています。

この記事には、世界銀行グループや他の開発パートナーが取り組んでいる、複数の民間資本動員(Private capital mobilization)手法が述べられており、IFCのこれまでの業務の漸増を超えた取り組みが進められています。その中で、例えばOriginate-to-distribute programという、IFCや他開発金融機関の途上国プロジェクト債権の証券化による民間機関投資家資金の取り込みは、新しい資本市場をも創出する取り組みです。しかし、IFCの現場で首席特務担当官(Chief Special Operations Officer)として多くの問題投融資案件の解決に携わってきた私には、バンカブル(融資可能)な途上国民間プロジェクト(特にPPPインフラ・プロジェクト(*2))を飛躍的に増やしていくことへの期待感が膨らむ一方で、投融資案件の粗製濫造につながる危うさも感じます。

多くの途上国民間プロジェクトの資金調達には、プロジェクト・ファイナンス手法が活用されていますが、その案件組成は、文化・法制度・ビジネス環境等を含めて案件毎に固有な状況がある為、テイラーメイドの一品料理が必要です。IFCでは多数の知識経験豊富なバンカーが、法務・審査・経理・E&Sなどのスタッフと共に日夜奮闘して取り組んでいます。本稿の「Myths and Truths」というタイトルは読者の注意を引いたかもしれません。私はIFCでの業務を通じて、プロジェクト・ファイナンスには多くのMythsがあり、その中にはTruthsでないものもあることに直面しました。そのMyths and Truthsのいくつかを紹介することで、途上国プロジェクト・ファイナンスに取り組む方々が、よりバンカブルな案件を組成することの一助となったらと考えました。

本稿では、途上国民間投融資にあまり馴染みのない読者もいることを考慮して、まず世界銀行グループとIFCの活動とプロジェクト・ファイナンスの概要を再確認します。そして本題の「Myths and Truths」の事例を3件紹介します。そして最後のまとめでは、私がストレスの多い業務を通じて体得した仕事のコツを披歴すると共に、プロジェクト・ファイナンスとPPPの参考書籍も紹介します。

(IFCが融資した屋根材工場を訪問 中央が筆者)

(*1)
Relentless Resolve: Overcoming Barriers to Private Investment in Emerging Markets, Makhtar Diop, Managing Director at IFC – International Finance Corporation, April 18, 2024, https://www.linkedin.com/pulse/relentless-resolve-overcoming-barriers-private-investment-diop-alkue/
(*2)
Public-Private Partnership(官民連携)によるインフラ・プロジェクト

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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