【コンセッション】仙台空港コンセッションの優先交渉権者に東急前田豊通グループ

2015.11.11 コンセッション


 国土交通省は2015年9月11日、仙台空港特定運営事業等の優先交渉権者として、東急前田豊通グループ(代表企業:東京急行電鉄、構成員:前田建設工業、東急不動産、豊田通商、東急エージェンシー、東急建設、東急コミュニティー)を選定した。
 同グループが設立したSPC(特別目的会社)は、「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」(民活空港運営法)が規定する国管理空港運営権者(運営権者)として、PFI法で規定される公共施設等運営権(コンセッション)の設定を受け、以下の業務を実施することになる。

●事業の概要
figure01

 優先交渉権者選定までの主な経緯は以下の通りである。2014年4月に実施方針の公表後、募集要項の公表から第一次審査書類の提出までが5カ月余り、第一次審査に2カ月弱をかけた。第一次審査結果の通知後、4カ月半の競争的対話を含み、第二次審査書類の提出までが6カ月、第二次審査に1カ月半をかけた。実施方針の公表から優先交渉権者の選定まで、トータルで1年5カ月弱の期間を要したことになる。

●優先交渉権者選定までの経緯figure02

 第一次審査には、①三菱商事・楽天仙台空港プロジェクトチーム(代表企業:三菱商事)、②東急前田豊通グループ(同:東京急行電鉄)、③MJTs(同:三菱地所)、④イオン・熊谷グループ(同:イオンモール)の4グループが参加した。
 審査では、募集要項の資格要件を4グループとも満たしていることを確認したうえで、各グループが提案する基本的な事業方針について審査が行われた。審査委員会(審査委員長:山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)は、第一次審査書類に含まれる提案審査書類について、仙台空港特定運営事業等優先交渉権者選定基準に準じて採点した。その結果を下記に示す。
 第一次審査では東急前田豊通グループが37.0点(50点満点)のトップ通過で、全グループが第二次審査に進んだ。

●第一次審査対象者および審査結果

figure03

 第一次審査を通過した4グループのうち、第二次審査では、三菱商事・楽天仙台空港プロジェクトチームを除く3グループが、競争的対話を経て審査書類を提出した。審査結果は下記の通りである。

●第二次審査対象者および審査結果

figure04

 審査の結果、配点の大きい「空港活性化に関する計画」で他グループを引き離し最高点161.5点(200点満点)を獲得した東急前田豊通グループが優先交渉権者に、152.7点のMJTsグループが次点に選定された。MJTsは運営権対価で、東急前田豊通グループを上回る額を提示したが、及ばなかった。
 東急前田豊通グループは、将来の空港のイメージを「プライマリー・グローバル・ゲートウェイ」(東北を発着する旅客に一番に選ばれる、東北で最も重要な航空貨物の拠点となる)とし、2014年度で年間324万人の旅客数を2020年度に410万人、30年後の2044年度に550万人とする目標を掲げた。2014年度で0.6万tの貨物についての目標は、2020年度に1万t、2044年度に2.5万tとしている。設備投資では旅客ターミナルビルの改修、LCC(格安航空会社)等の旅客搭乗施設やエアライン事務所、立体駐車場の新設など、341.8億円の投資額を見込んでいる。
 運営権対価について、同グループは22億円、MJTsグループはより高額な対価を提示した。一方、2011~2013の空港別収支等によると、仙台空港特定運営事業に相当する収支は3 期連続して経常損失が生じている。つまり、運営権対価がゼロ円を上回るときは、仙台空港特定運営事業にVFM(バリュー・フォー・マネー)が認められることとなる。22億円を提示した東急前田豊通グループ案もVFMがあると評価された。
 
 国はその後(2015年9月)、SPC(本事業を遂行する株式会社)設立に関する手続き、公共施設等運営権の設定や公共施設等運営権実施契約の締結に関する手続き、契約手続き等に対する双方の努力義務等を定めた「仙台空港特定運営事業等基本協定書」を同グループと締結した。
 今後、2015年12月に運営権設定・実施契約を締結し、滑走路等の維持管理・着陸料の収受等の空港運営事業は同12月から引き継ぎ(OJT等)を始めて2016年6月末にSPCへ完全に事業移管、運営事業と一体的に実施するビル施設等事業は2016年2月に開始の予定だ。

【情報ソース】
・「仙台空港特定運営事業等の優先交渉権者の選定に係る客観的評価結果等の公表等について」、国土交通省、2015年10月
・「仙台空港特定運営事業等優先交渉権者選定結果」、国土交通省航空局、2015年10月
・「仙台空港特定運営事業等」、東急前田豊通グループ、2015年7月
・「仙台空港特定運営事業等基本協定書の締結について」、国土交通省、2015年9月

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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